手作りの表札。
何度も塗り直されたアイボリーの門扉。
お庭には小さなピザ窯があって。
たしか、ご主人が造られたもので。
午後の陽ざしがサンルーフを暖めている。
薄手のカーテンから、コの字に置かれたソファが透けて見える。
チャイムを鳴らすが応答はない。
陽がある内に出かけるのは賢明だ。
田舎はすぐに寂しくなる。
自分の役回りを全うし、もう一度訪ねた。
足元の段差も見分けがつかないほどに陽は暮れていた。
田舎はすぐに暗がる。
ソファのあったサンルーフの奥に灯りが見える。
チャイムの音で玄関にも明かりがついた。
「チョコ持ってきちゃいました」
カラフルなベストを着た夫人が笑顔で迎えてくれた。
「あがっていく?どうぞ!」
ご主人を偲びながらおしゃべりしたかったが、次に向かわなければならん。
「また明るいうちに来ます」
気持ちが弾んだ。
喜ぶ顔が嬉しかった。
ひとりじゃないですよ。
この想いを時々伝えに来たいと思った。