今から約20年前。
少年のもとに、任天堂とリクルートの合弁会社「ランドネットDD」から電話がかかってきた。
この記事では NINTENDO64 (ニンテンドウロクジュウヨン)の周辺機器 64DD (ロクヨンディーディー)を使ったゲームコンテスト、「マリオアーティスト甲子園」で入賞した話について、紹介していきます。
64DD
任天堂のゲームハード「NINTENDO64」には「64DD」という周辺機器がある。
NINTENDO64 の本体下に取り付けて使う磁気ディスクドライブで、専用のディスクを差し込み、ゲームをプレイする。
64DD を手に入れるには、会員制通信サービスの会員になる必要があった。
運営元は「ランドネットDD」で、10万人限定で会員を募ったが、会員数は1万人前後だったといわれている。
ランドネットの終了通告時、会員数は15000人であると発表された。しかし、実際は10500人強だったようだ。
64DD は出回っている数が少なく、入手困難な幻のアイテムとして、ゲームファンの間で知られている。
幻の1万人
私は幻の1万人のひとりだった。
64DD を手に入れるには「クレジットカード」という、少年にはきびしい条件があった。
母にお願いして、なんとか手に入れた。
ゲームが(任天堂が)大好きだったからだ。
64DD を手に入れた理由
「64DD でゼルダの伝説やスーパーマリオの新作がプレイできそうだ」という期待。
10万人限定と、あおられた効果もある。
時計機能を内蔵しており、ゲーム性にも魅力を感じた。
「1週間ぶりにゲームを再開してみたら、いつの間にか地面に草が生えている」
時計機能のおもしろさだ。
しかも 64DD でインターネットができる。
64DD は、夢がたくさんつまった NINTENDO64 の周辺機器だった。
マリオアーティスト甲子園
インターネット上で 64DD を使ったゲームコンテスト「マリオアーティスト甲子園」が開催されることとなった。
参加を決め、入賞を目指した。
■審査員
- 伊集院 光さん
- 漫画家 餅月 あんこさん
- 64DD ソフト開発チーム
- クリエーター
64DD でメウビッシュがつくったムービー
つくったのは、ダンスムービー。
応募タイトルは『踊る★ダンス捜査線♪』。
ハンドルネームは「ゲンガー大王」とした。
こまかいことをやるのは好きだ。
64DD と専用ソフト『マリオアーティスト タレントスタジオ』で、アフロヘアのキャラクターをつくった。
彼に自分で考えたオリジナルダンスの動きをつけていく。
遊び心をたいせつに。
ラップを意識し、音声入力のマイクで「YO!」という自分の声をふきこんだ。
自分でつくった奇妙なボイスパーカッションのリズムに YO! という声が、定期的に響き渡る。
リズムに乗ったアフロダンサーが、おもしろおかしなダンスを披露していく。
よし、完成だ。
64DD へ電話線をつなぎ、作品をアップロード。
結果待ちとなった。
ダンスムービー部門賞受賞
◆
◆
◆
「落選したのだろう」
ところが、「ランドネットDD」から電話がかかってきた。
「ダンスムービー部門賞受賞の知らせ」だった。
コメントがほしいという。
「暗中模索でした」とコメントさせていただいた。
受賞者として「3万円分の商品券」を手にすることができた。
遊び心が、功を奏したのだろう。
会報誌「ランドネットFAN」によると、審査では、メッセージやテクニックなども重要視されたという。
マリオの名のつくゲームコンテストで入賞することができ、光栄でした。
まとめ
当時2000年ごろは、インターネット黎明期。
回線の通信速度は、ひどいものがあった。
けれど、わくわくがとまらなかった。
「64DD とインターネットで、これからどんなことが起こるのだろう?」
近未来へ胸をおどらせた。
64DD でインターネットのたのしさを知った。
忘れることなどできない。
ランドネットDD のサービスは、わずか1年ほどで終了。
短命だった。
流れ星のように、一瞬輝き、消えていった。
しかしたしかに私は、「ゲームでしかあじわえない感動」を、目撃したのだ。