エルネスト・チェ・ゲバラ. 医師であり、革命家であり、軍人であり、善き師であり、そして愛の伝道者でもある男. そしてこの作品はそんな偉大な一人の男を描いた崇高な映画であるように思えるほど、素晴らしいものでした. 正直チェ・ゲバラについて勉強しておくか、もしくは 『モーターサイクル・ダイアリーズ』 を見てからでないと難しく感じる映画だとは思いますが、今の時代だからこそ見ておくべき映画ではないでしょうか. フィデル・カストロと出会い、バティスタ政権を打倒してキューバを解放するまでを描いたこの『チェ』2部作の前編. キューバでの革命活動のシーンはカラーで、アメリカでの取材や国連での演説シーンを白黒で描く手法が凄く印象的で、これが後編の『39歳別れの手紙』でどのように作用するのかが非常に楽しみです. 映画的にはこのキューバでの銃による戦いのシーンとアメリカや国連での言葉による戦いのシーンを交互に描くので、分かりにくいという反応もたくさんあったみたいですが、個人的には徐々にチェ・ゲバラの内面に入り込んでいくようなこの描き方がとてもスティーブン・ソダバーグらしい「映画的見せ方」のように思えました. 特にオープニング直後の敵の兵舎を襲撃するシーンを途中からアメリカでのインタビュー音声だけを入れて銃声を消してしまう見せ方は素晴らしいです. あのシーンで、チェ・ゲバラという革命家は決して武力だけに頼る革命家ではない. むしろ革命の大部分を武力という選択肢に頼らざるを得なかった哀しき革命家に見えてくるんですよね. ですからその後描かれるチェ・ゲバラの行動一つ一つも自然と崇高に見えてくるんです. ナイキエアマックスHyperize 特に彼の部下や農民たちへの対応は人間としては見習うべきものばかり. フィデル・カストロが政治家のように状況を見てリーダーとして君臨しているのに対して、チェ・ゲバラは部下や農民など一人一人に気を掛けて、周りから兄貴分として慕われている優しきリーダー. しかも彼はどんな状況でも感情的に怒ることは一切せず、信賞必罰のもと敵味方関係なく、情けを掛けるところと厳しくするところを完全に分けているところが人として凄いとしか言い様がありません. 自身も喘息で体力的にも精神的にも楽でないはずなのに、しかも革命のためとはいえ自分の祖国でもないキューバで「祖国か! 死か! 」と叫んでは司令官でありながら最前線で危険と隣り合わせで戦っているのに、また戦闘だけでなく農民たちの医師として働きながら若き兵士に読み書きを教えている多忙な日々を送っているにも関わらず、ああいう行動が出来るのは本当に人として素晴らしいですし、彼こそまさに崇高な人物そのものだと思います. この映画のラストでの部下に盗難車を返すように説教するシーンも、まさにチェ・ゲバラという一人の人間を語るに相応しいエピソードだったと思います. 人情もないような今の時代だからこそ、チェ・ゲバラのような人物を必要としてしまうのなら、本当の意味での革命は中南米だけでなく日本やアメリカでも必要ではないのか. そんな哀しき疑問を抱かざるを得なくなるほど、崇高に思える映画でした. 深夜らじお@の映画館 も人として革命すべきかも知れません.