株主の権利の行使に関する利益供与の罪 | "MEMORANDUM"

株主の権利の行使に関する利益供与の罪

2011年10月24日付日本経済新聞「法務インサイド」より
大王製紙は9月16日、創業家出身の井川意高前会長が引責辞任したと突如発表した。グループ会社から総額84億円を個人的に借り入れたことがコーポレートガバナンス(企業統治)上、問題になるというのが理由だ。

2011年3月期の同社の有価証券報告書の関連当事者との取引の注記には、連結子会社が井川会長に対して、2,350百万円を貸し付けていた旨が記載されています。井川氏は大王製紙の大株主であり、1.0%の議決権を保有しています。

筑波大学の弥永真生教授は貸し付けが無担保だったことから「相応の金利を課さなかったとすれば、株主権の行使に対する利益供与の推定が働くか、実質的な役員報酬に該当する疑念がある」と指摘する。

「株主の権利の行使に関する利益供与の罪」は、「株主の権利の行使に関し、当該株式会社又はその子会社の計算において財産上の利益を供与したとき」(会社法970条)に成立します。
利益の供与を受け、又は要求した側も処罰されます。

本罪は総会屋の排除を目的として昭和56年の商法改正により設けられた罰則であり、その適用範囲はかなり広いものになっています。

さらに、株主の権利の行使は、利益の供与を受けた株主自身の株主権の行使に限られず、第三者たる株主の権利の行使に関する場合でもかまわないので、この場合、利益を受ける者は株主である必要さえありません。

法定刑は、「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」です。
供与を受け、又は要求する時に、威迫の行為があった時には、「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」になります(第4項)。

なお、株主の権利の行使に関する利益の供与は、会社法120条でも禁止されています。こちらは民事上の責任として、利益を受けた側の返還義務や、取締役の損害賠償義務を定めています。