マーケットリスクプレミアムの短期変動をWACCに反映させるべきか
《株価の下落=投資家の期待利回りの上昇》
S&Pによる米国債の格付け引き下げをきっかけに、先週は世界の株式相場の多くが下落した。
その結果、1株あたり利益を株価が割った「益回り」は、東京市場で7.26%(8/11)まで上昇した。
これは、投資家が配当と値上がり益を合わせて、7.26%のリターンを期待していると言い換えることができる。安全資産である10年国債利回りは1%程度だから、リスク資産である株式に対しては、両者の差の6%強の超過リターンを求めるていると言ってもいいだろう。
投資家の期待する超過リターンが高まれば、資本コストが上昇し、WACCは上昇してしまう。企業はWACCを上回る企業価値を生み出す必要があるから、事業のハードルが一段と高まったともいえる。(日経ヴェリタス8/14 57面 一部抜粋)
《マーケット・リスクプレミアムの短期変動をWACCに反映させるのは適切?》
確かにWACCを構成する株主資本コストは、CAP-M理論を前提とした場合、以下のように表現される
株主資本コスト=無リスク資産の利回り+(マーケット・リスクプレミアム)×β
マーケット・リスクプレミアム=市場の平均期待利回り-無リスク資産の利回り
つまり、上述の記事は、マーケット・リスクプレミアムが6%強まで上昇ししたため、WACCも上昇し、企業は従来以上の経営努力が必要となるというものである。
ところで、社内意思決定のハードルレートにもなりうるWACCを短期のリスクプレミアムによって変動させることは適切なのだろうか?
そもそもマーケット・リスクプレミアムは、将来の期待値を過去のデータから予測しているにすぎない。
将来の予測には、株式市場の暴落、経済の拡大、不況、競争、スタグフレーションなどを多く含む長期間のデータを見るほうが、直近の短い期間のデータを見るよりも、より適切であると考えるのが自然である
目先の市場動向に一喜一憂して、適切な投資が行われないような事態を起さないことが肝要である