MBOで経営陣は株主の重圧から解放されるのか | "MEMORANDUM"

MBOで経営陣は株主の重圧から解放されるのか

《MBOとは「経営陣によるホンの一部の株式の買取り」》


「MBO(マネジメント・バイ・アウト)」は、「実際に経営している人」が、自分の会社を買収することです。


しかし、実際は、ファンドがほとんどの株を買い取り、経営陣がほんの一部の株を買うことになります。

というのも、経営陣がいくら資産家でも株の買い取りに拠出できる金額は数億円~数十億円程度であり、MBO後の株主構成を見てみると、たいていはファンドが大株主として君臨する構図となります。

ファンドは、買った株式を必ずいつかは売却します。そして買った株をその値段以上で売却するため、企業価値の向上を経営陣に要求することとなります。


つまり、MBOとは、経営陣が「会社を支配すること」でもなければ、「自由な経営ができること」でもないのです。


《長期的な経営ができるのがMBOのメリット》


では、なぜMBOを望む経営者がいるのかということになりますが、ひとつは「長期的な経営ができる」という点が挙げられます。

例えば、4年後の大きな利益獲得を目指し、敢えて向こう1~2年間は、コストを増やして利益を下げてでも体力をつけたいと考える経営者がいると仮定します。

しかし、「1~2年後も利益を下げるな、そして4年後も利益を上げろ」と、大多数の株主に言われてしまえばそれまでです。

彼らは、将来企業が失速するよりは、経営者のビジョンを理解し、じっくりと経営に付き合ってくれる株主が存在するなら、そういう株主とともに経営をやって行きたいと思います。

それがファンドということになります。


《経営陣は財務レバレッジを効かせて大きなリターンが得られる》


では、経営者がMBOをする理由は、それだけなのでしょうか?


ここで、MBOにより、経営陣&ファンドがある企業の全株式を250億円で買収したと仮定します。

そして、買収金額のうち100億円はファンド&経営陣の自己資金で、そして残り150億円は銀行からのローンで集めたと仮定します。


買収金額250億円=ローン(銀行)150億円+自己資金(ファンドと経営陣)100億円


3年後にこの会社の価値が上がって、「20%高い値段」で他の企業に売却するか、IPO(再上場)できたとすると、売値は250x120%=300億円となります。


売却金額300億円-ローン返済150億円=株主に残る金額150億円


このとき、株主に残る金額は約150億円となります。

つまり、企業価値は20%しか上がっていないにもかかわらず、元金が3年間で50%も増えたことになるのです


このカラクリはローンにあります。

総額が20%増えても、返済金額は150億円のままであるため、テコの原理が働いて、株主へのインパクトはその分大きくなります。このテコのことを英語でレバレッジ(Leverage)と呼ぶ。MBOは通常「LBO」でもあるのです


《MBOのファンドは借入資金の返済義務を負わない》


ここでLBOについて整理をしておきましょう。

「LBOとは買収する相手の資産や収益を担保に、買収する資金を調達して買収すること」です。

M&A(企業の合併・買収)におけるLBOとは、買収先企業が将来生み出すCFや保有する資産を担保にして、買収資金を借り入れることとなりますが、最大のポイントは、「買収者はその借入金に対して債務を負わない」という点にあります。


例えば、すかいらーくのMBOのケースでは、「本来の買い手(現在の株主)」である、野村プリンシパル・ファイナンスやCVCキャピタルパートナーズには債務が及ぶことはありません。

両社が出資したSNCインベストメントが旧すかいらーくを買収し、吸収合併することで、新すかいらーくに債務が引き継がれる。つまり、自分が買収された時に使われたお金を、自分で返済するのです。
"ADVERSARIA"

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先ほども述べたように、財務レバレッジを効かせることで、成功したときの経営陣のリターンは大きくなりますが、失敗した時の損失も大きくなります。しかし、ファンドには債務返済の義務がないことから、失敗した時のリスクを回避することができ、うまみは大きくなります。結局ファンドは借入金調達の仲介をしているに過ぎないのですが、その過程でちゃっかり大株主の座も確保しているのです。


《MBOに向いているのは、CFが安定している会社》


ここまで、見てきたように、MBOを実現させるためには、「いかに、金融機関からそのローンの調達ができるかどうか」にかかっています。

ローンの出し手としては、キチンと毎年返済されることが重要となるため、金融機関は今後被買収会社がきちんと安定的に稼げるかどうかを重視します。

つまり、常時、確実に需要があり、日銭が稼げる衣食住関連の企業では、MBOが行われやすく、一方で、収益のブレの激しいIT企業や、半導体企業ではMBO案件はなかなか成立しずらいということになります。