⚠️昆虫嫌いのかた、一部衝撃内容が含まれます。ご注意ください。
私はセミが大好きだ。特にクマゼミを愛してやまない。涼しげな透明の羽に鮮やかな蛍光グリーンのライン。堂々たる体躯を樹上に浮かび上がらせ、不思議な周波数でひとしきり鳴くと、ブンッと低い羽音を響かせてサッと大空に消える。
ああ、なんて清々しいのだろう。
しかし、今時期は、チカラなくひっくり返っている個体も多い。
おい、大丈夫か?
昨日も買い物から帰ると玄関前のタイルに背中をつけ、空中にゆらゆらと脚を動かしているクマゼミがいた。助けたいけど、両手いっぱいの荷物が邪魔だ。
ちょっと待って!
慌てて荷物を家に入れて救出に向かう。
おいで。
人差し指を差し出すと、6本の脚で必死にしがみついてくる。
あ、よかった。まだ元気が残ってる。
クマゼミたちが大好きな、細身の枝ぶりの樹を見つけて近づくその時。
あいた!
人差し指がチカッとしたので見ると、
こりゃあ!違うよ、それは。
朦朧とした意識の中だからか、クマゼミが最後のチカラを振り絞って、私の指に細長い口を突き立てていたのである。
ダメよお、ちょっと待って。
覗き込むと、
あれ?なんで刺さんないの?
といったふうに大きな目でこちらを見上げている。
ああ、痛いけどなんて可愛いんだろう。
ゆっくりと指から引き離して樹に留めてあげると、ヨロヨロと登っちゃ滑る、を繰り返して最後は地面に落下した。
あああ。
仕方なく拾って、倒れかかっていた緩い勾配の桜の幹に留めてあげるとホッとしたように動きを止めた。
わかっているのだ。ひっくり返っている時点で終わりが近いことは。だけど、せめて最期は木の上で。アスファルトじゃなくて。
以前はこんな姿を見ると、辛く悲しかった。なんとか元気になってほしいと、余計なことばかりしていた。しかし、今は違う。
よく頑張ったね、お疲れ様。
と、ねぎらいとリスペクトが浮かんでくる。そして、ゆっくり休んでほしいと願う。
私も、トシを取ったということか。
意外や、cicadaは英検準1級レベルの難関単語。子供の英会話教室でこれが出ると、子供達はいつも大喜びだった。口々に
シケイダー
と叫び、飽きてくると
失敬だー
と応用してくる子に便乗して帰るまで言い続けて、すぐに覚えてしまう。なかなか覚えられないのは、fly(ハエ)だったなあ。butterfly(蝶)dragonfly(トンボ)といったフライシリーズが多い上に…あんまりキョーミないもんねえ😆