あれからもう30年たつのお!?
カラオケの十八番、あの名曲「夏の日の1993」。ウォーキング中につい口ずさんでハッとした。

いきなり恋してしまあったよー。

今年の夏はぶっ壊れたおフロの改修で終わったなあ。

しみじみと旦那さんが言う。

そう、人嫌い風呂好き人間の旦那さんにとって、お風呂屋さんに通った3日間は想像を絶するストレスだったようなのだ。

私も女湯でなんとも言えない空気感に戸惑った。観光地の露天風呂なんかとは違い、年季の入った常連さんたちが思い思いのスタイルで「いつもの場所でいつもの時間」を楽しんでおり、知らずにそこに被ってしまうとみんなが目配せして笑い合い、〝仕方ないなあ〟となんとかお許しを頂く不思議な空間になっていた。

やっぱり自分ちの風呂が一番だよな。

ほんと。自由だもんねえ。

まあ、カベとかもキレイにしてくれたよなあ。ほんと良かった。

そのカベ職人さんはスゴかった。思い出してちょっと笑ってしまった。

なんだ、そんなに嬉しいのか?

うん。あのカベ職人さん凄かったよね。

ああ、器用に貼るよな。模様があって難しいのにな。

しかし、彼がスゴいのは技だけにはとどまらなかった。

自慢のロングヘアーを高い位置でポニーテールに束ね、赤いヘアバンドを装着した様は、格闘家の登場を思わせた。

そして浴室の扉を閉めるや否や、気分を高揚させるためか、野太い声のロックミュージックが流れ始めた。

マイ・スタイルがあるんだな

完成された世界観は意外や好感が持てた。

途中、道具を取りに行く職人さんに声をかけた。

あ、そこトイレなんです。自由に使われて下さいね。

あ。これは!助かりますう。

周りにコンビニや飲食店がなく、地理勘のない場所ではトイレ一つ探すのも大変だ。しかもお風呂の改修はたくさんの業者さんの連携なくしてはできない。持ち時間がタイトですごく気を使うようなのだ。簡単に車で移動したりは難しい。

一日の作業が終わり、皆さんが帰られた後、一通り掃除をした。完璧に養生した上で、最後キレイに片付けてくださっているが、どうしても埃が舞い、搬入して頂いた資材の梱包材などが落ちている。

ついでにトイレも掃除しとこ。

ガチャリとドアを開けた瞬間、私は驚きの声を上げた。

これは!

そこには衝撃の光景が広がっていた。

きちんとトイレのフタを閉めてスリッパを整然と揃え、トイレットペーパーの先を三角折りにしてあったのだ。

そこに職人としての矜持と、人としての可愛らしさ、というかお茶目さも感じて胸がいっぱいになった。

ポニテ赤バンドに野太いテーマソング、そして乙女な三角折り。

萌えーっ!

トイレを出るなり、扉を閉めて私は思わずシャウトした。

ねえ、あの職人さん、うちのトイレ使ってだんだけどね。

うん。

すごくキレイに使ってあって。

おお。

最後ペーパーを三角に折ってあった。

へええ!?

呼吸が苦しくなるくらい旦那さんは笑い転げた。

意外と…意外と…

可愛いひとなんだな

可愛いひと。スゴいひと。

いきなり、恋して、しまったよー。

夏の日のきみにー♡


1960年代生まれがふたり、珍しく和して歌った。