こんなところに神社あるのかなあ。

矢印の書かれた案内板を頼りに曲がると、住宅街に入り込んだ。すると突然、鳥居が見えてきた。

あ!ここ、一度来た事がある。それはつい半年前の土砂降りの日だった。仲の良い友人と出かけた日、急に暗雲が立ち込め、窓ガラスに打ち付けるような大雨になった。

わあ、困ったなあ。どこか雨宿りできるカフェとかないかな。

愛車の足回りを心配した友人がナビに手を伸ばした時、神社の案内板が遠くに見えた。

ねえ、神社がある。寄ってみようよ。

ええ⁉︎

いつも「うん、行ってみよっか」と明るく答えてくれる友人も、横殴りになって来た雨を見上げて

うーん

と黙り込んでしまった。

これもご縁ていうか…龍さまがお喜びよ?

なんだかそんな不思議な空模様だった。降りしきる雨、吹き荒れる風で鱗の埃を洗い流し、気流に乗って躍り上がる姿が垣間見えるような。

にっこり笑うと、友人は

そうだね。行こう。

と頷いた。それを合図に私たちは、それっと境内を目指して飛び出した。

わあわあわあ!

突風に背中を押され、ほとんど押し上げられるようにしてあっという間に参道に出たときには二人とも濡れねずみになっていた。わけもなく笑いあい、手水場に向かうと、感染症対策でお水は使えなかった。

やだー!

またわけもなく二人でどっと笑った。
傘はすっかりハングライダー状態にパンパンに風をはらみ、閉じなければ体が舞い上がりそうだ。やっとの思いでお賽銭を用意すると、私たちは有り難く参拝をした。そんな顛末で、失礼にもどんな神社さんなのかもよくわからないまま足早に退出したのだった。

あの時は失礼しました。

丁重にお詫びをし、再びご縁を頂いたお礼を述べお参りをした。それから、封筒に入れたお金を取り出して旦那さんに言った。

宮司さんとお話があるからちょっと先に戻っていて。

へ?

旦那さんはけげんそうな顔をしたが、

うん。

と一人車に向かった。