思い出した。小学生の男の子が三人やってきて、ニコニコ笑いながら手招きをしていた。

ちょっときてん。こっちきてん。

知らない顔だ。行ったことのない脇道に立っている。もう帰らないと。幼稚園年長の私は頭を横に振る。

来いって。面白いもの見せてやるから。

あっという間に三人は私の後ろに回って私を押す。

ええ?

見た事のない風景が広がっていた。草むらの中に古いトタン屋根の小屋が立っている。焦りながらもなんだろうこれ?と探検してみたい気持ちが湧いてきた。



あー、そっちじゃない。

三人が代わる代わる私を逆向きに押す。
縦長の小さな建物の前に着いた。木の扉がついている。なんだろう。

それっ。

一人がその扉を開けるとそこは和式のポットン便所だった。

えー、こんなところにトイレなんかあったっけ。4つ上の兄がおり、兄と、兄の友達と一緒に近所の探検に明け暮れていた私は、まだ知らない場所があるという事に心を奪われていた。
その間に三人は私をそのトイレに押し込め、呆然としている私の鼻先でピシャリと扉を閉めた。

え?

かちゃかちゃと掛け金をかける音がする。どうしよう。

助けて。

少年たちがどっと笑う。そしてバラバラと足音がして、あたりは静けさに包まれた。

うそ!閉じ込められた?