ATSUSHI。まるで野球部の友達のように呼んでるけどEXILEのATSUSHI様の事だよね?


突っ込んでやろうとつよしくんの顔をちらりとみると、その目には揺るぎない強い光が宿っており、ちょっとひるんだ。彼なりに最高のリスペクトを持って放った大切なひとことだったのだろう。


ザギャッシエッグって聞こえる。エッグって?たまご?意味がわからんのよ。スリーナインはわかるよ。これなんて読むん?


開いたキャンパスノートをこちらに向け、つよしくんはプーマの筆箱からエンピツを取り出した。早く教えんかい、というアピールである。


エッグ?いたかそんなキャラ。頭の中にハンプティダンプティが浮かぶ。銀河鉄道スリーナインは確かにいろんな星に行くのでいる可能性も⁉︎いや、でも記憶にございません。



そもそもそんな歌詞でしたっけ?

ノートを見て合点が行った。このパート、早すぎて音が吹っ飛んで聞こえるのだ。


ザ ギャラクシー エクスプレス スリーナイン ウィル テイク オン ア ジャーニー の冒頭、確かにザギャッシエッグに聞こえる。


あー、ここねどうせ音が飛ぶからザギャッシで低めに入って、エクスプレス スリーで三拍、足で取ってみて。エ!プ!ス!で踏んで強く出す。あとは気分で大丈夫。


エ!くすプ!れっすス!りーないん!


あれ?できん。


エクスプレスのスとスリーナインのスが同じやけおまとめして一個にしたらいいよ


エ!くすプ!れっス!りーないん


あ!できた。できたできた。ありがと先生。

やったー。


ガッツポーズを決めたので塾長が飛んで来た。


なんか、つよし。単語テストで満点やったんか?


そんなんよかもっとすごい事なんよ。

単語テストとか誰でもやれば取れるやん。


おお?すごい事ってなんなん?


教えん。俺期末の準備で忙しいんやけ。


取り出した教科書ワークには少し書き込みがあった。


おお?今度は私も驚いた。やるやん。言いかける前に塾長が叫んだ。


つよしが教科書ワーク持って来とる!


周りから湧き起こった笑いを制しながらつよしくんがドヤ顔で言い放った。


点取るだけじゃダメなんよ。俺はカッコよくなりたい。


その瞬間、彼は充分カッコよかった。