北九州マラソンのテーマには思い出がある。
EXILEの銀河鉄道999のほうだ。つよしくんていう中2男子がその曲が大好きだった。

当時私は個別指導の塾で講師をしていた。

あ、今日つよしを頼みます。

出勤するなり、塾長が言いにくそうに声をかけてきた。

いつもの先生が今週来れないんで。教科書準拠のワークで進めてます。ただちょっと…地頭はいいんですが。

私もこう見えて講師歴20年。そこまで聞いて大体察しがついた。つよしくんは最近授業態度が良くなくて困ってるんだそう。だけど小さい頃から通っているつよしくんは塾長にとってはもう甥っ子くらいの身内感で、いまいち突き放せない塾長の優しさがにじんでいた。

なんとかお願いしますっ!

丁寧に頭を下げられて、笑ってしまった。

大丈夫ですよ。今は練習試合とかで頭がいっぱいなだけなんじゃないですか?

うーん、そう言って頂けると安心なんですが。

野球部で活躍しているつよしくんは、来れない事も多いらしい。

その日、つよしくんは時間通りにやってきた。初めて会ったけど、精悍な顔つきをした感じの良い男の子だった。

塾長がチャチャを入れに来る。これは塾長の奥義なのだ。最近の状況をみて、的確に突っ込みを入れて和ませつつ、必要な情報を引き出していく。

おい、つよし!珍しいやんか早々と席について。やっとやる気出してきたなー。さすが野球部のエース😆期末でもビシッと打ち取ってくれ⁉︎

その時。すっと右手を持ち上げて塾長を制し、つよしくんが口を開いた。

もう始まっとるんよ。先生こそ静かにしてっちゃ。(北九州弁です。ラムちゃんではありません)