相撲にちょっと詳しくなるかもしれない攻略本、第二弾は番付のお話です。思ってたより長文になっちゃいました。


「番付」という言葉自体は相撲以外の場面でも使われるので、聞いたことはあるのではと思います。


大相撲における「番付」とは、即ち各力士の地位を表すもので、本場所の成績をもとに毎場所更新されます。


相撲の番付は以下のとおり10段階(番付外も含めると11段階)あります。



図1. 番付一覧


上図のうち、幕下以下は「力士養成員」とも言われ、一人前の力士になるために稽古に励んでいる人たち、という位置付けとなっています。いわゆる下積み時代の人たちってことですね。「若い衆」「取的」「褌担ぎ」などと言ったりもします。


十両以上の力士は「関取」と呼ばれ、一人前の力士として扱われます。

実は幕下以下の人たちは給料がほぼゼロなのですが(厳密には雀の涙ほどの手当は出る)、十両以上の「関取」になった途端に月収100万を超えます。厳しい勝負の世界ですが夢がありますね。


給料以外にも、関取と若い衆はあらゆる面で待遇が異なります。


例えば、テレビ中継でよく見る、力士たちが締めている色のついたカラフルなまわし。あれは本場所の取組専用のまわしで、「締め込み」と呼ばれるものです。実はあの色付きのまわしは関取しか締めることが許されません。若い衆は黒いまわしで統一されています。さらに材質も異なり、関取の締め込みは絹製であるのに対し、若い衆のまわしは木綿製です。ここにも格差があるわけです。もっというと、稽古用のまわしすらも関取と若い衆で格差があります。関取に上がると、稽古場では白い稽古まわし(木綿製)を締めることができますが、若い衆は本場所も稽古場も同じ黒いまわしを使用します。したがって、稽古場に白いまわしを締めている人が沢山いると、ここは強い相撲部屋なのだ、と箔がつくわけです。


そして関取のみに許されるまわしといえばもう一つ。土俵入りの時にのみ使用する「化粧まわし」です。江戸時代は実際に化粧まわしで相撲を取っていたとも言われますが、現在は十両土俵入り、幕内土俵入り、そして横綱土俵入りの時にのみ着用します。化粧まわしは非常に高価なもので、一般的なもので100万円以上します。若い衆の取組が終わり関取たちが華やかな化粧まわしで登場すると、一気に「本番が始まった」って感じがしてくるものです。

さらに横綱だけは別格扱いで、化粧まわしに加えて綱を締め、2人の従者を従えて個別に土俵入りを行います。まさしく真打登場ですね。



図2. 浅葱色の締め込みの大関琴櫻


図3. 木綿製の黒いまわしを締めている入門当初の白鵬(後の横綱白鵬)


図4. 白い稽古まわしで稽古をする横綱照ノ富士


図5. 化粧まわしを締めて土俵入りする関取衆


図6. 横綱土俵入りをする照ノ富士



まわし以外にも、力士の象徴である髷(まげ)。これも関取と若い衆で異なります。関取は「大銀杏(おおいちょう)」と呼ばれる特殊な髷を結うことができるのですが、若い衆はただ髪を束ねただけのちょんまげです。下積みの若い衆たちは、いつか大銀杏を結うことを夢に稽古に励んでいるのです。


図7. 大銀杏を結う小結遠藤


図8. 髪の長さが足りずちょんまげを結っている大関大の里



さらに関取と若い衆の待遇の違いを紹介すると、関取は部屋でのあらゆる雑務を免除され、その上若い衆の1人を自分の「付け人」とすることができます。逆にいうと、若い衆は様々な雑務や、関取衆の付け人としての仕事をこなさねばなりません。部屋でのちゃんこ番(料理係)も雑務の一つですね。中々昇進出来ず下積みが長い力士は料理が上手くなり、セカンドライフで飲食業で成功しやすくなる。ある種よくできた仕組みともいえますね。


また、ここまでは十両以上の「関取」を全て一括りで説明してきましたが、実は関取の中でも幕内と十両では待遇が違います。


「幕内(まくのうち)」とは、前頭(まえがしら)以上の番付をまとめて呼ぶ際の名前です。地上波の相撲中継で普段目にするのは幕内力士たちです。約600人以上いる力士の中で幕内力士は42人しかいません。精鋭ですね。


幕内力士は付け人の人数を十両よりも増やすことができ、2〜3人の若い衆を自分専属の付け人として登用できます。


また、幕内力士になると、土俵下の控えに座る際に「力士座布団」と呼ばれる自分専用のクッソふかふかな座布団を使用することができます。長く十両に留まっていた力士が念願の幕内に上がった際に「座布団がふかふかで驚いた」といったコメントを残すことが多々ありますね。



図9. 力士座布団に座って取組を待つ一山本



また、幕内力士の特権として最もわかりやすいのは、「懸賞金」です。


大相撲の取組の中で幕内のみ、取組に対して懸賞がかかることがあります。永谷園とかの旗が土俵上を回る例のアレです。



図10. 土俵上を回る懸賞旗



懸賞旗1本あたり3万円が取組の勝者に対して贈られます。例えば、照ノ富士 対 若隆景 の一番に対して懸賞が35本付けられて照ノ富士が勝利した場合、勝者である照ノ富士は3万円 × 35本 = 105万円を1つの取組で得られるわけです。凄まじい話ですね。



図11. 取組に勝利し懸賞金を受け取る照ノ富士


ということで、今回は「番付」に関することを中心に大相撲について解説しました。上記以外にも番付による細かい差はありますが、おおよそこんな感じなんだな、と思ってもらえればいいかなと思います。