前回の記事は財政政策を拡大させるときはどの程度まで行うのが安全かという話をしました。

適正な財政出動の規模とは? | 新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~ (ameblo.jp)

 

おおまかに言ってしまえば経済活動の供給力と需給量の差であるGDPギャップあるいは需給ギャップといわれている指標を目安に予算の規模を決めれば、ひどいインフレになる危険はないことをお話しています。これを見ないで「もっと財政出動しろ」とか「消費税を全廃しろ」といってしまったり、逆に「財政出動をするとインフレガー」と騒ぐことはナンセンスな話です。あと国家財政状況と物価ですが、財政赤字や債務残高とインフレ率との関係は思われているより薄いです。

 

 

今回は表題のとおり金融政策と物価の関係について述べます。

多くの人たちは「物価が伸び悩んでいるときは金融緩和、物価が上昇したら金融引き締め」という理解をされているかと思われます。その理解は間違っていません。しかしながらなぜ金融緩和をすると物価が上昇していくのか、あるいは金融を引き締めすると物価が下がるのかという理由まで知っている人はあまりいないように思えます。

金融緩和とは基本的に(政策)金利を下げることであり、金融引き締めは(政策)金利を上げることです。政策金利を下げてやれば事業拡大のために設備投資を行ったり、原材料の仕入れや人員の補充をするための資金を事業者は借りやすくなります。それによって企業から従業員や関連企業にお金が流れ、彼らの所得が増えることで消費欲を促し、最終的に物価が上昇していくというかたちになります。

 

金利引き下げ→投資増加→雇用増加・賃上げ→消費活発化→物価上昇

 

という流れで金融緩和政策の効果は波及します。

 

 

いまのアメリカのように完全に景気が過熱して、企業が賃上げして求人をしても人が集まらないほど雇用が逼迫しているような状況のときは金利を上げてやります。

 

金利引き上げ→投資抑制→雇用鈍化・賃下げ→消費鈍化→物価下落

 

という順で物価を下げさせます。

 

金融政策は金利操作によって企業などの投資意欲や雇用意欲を刺激したり抑制するものだと思っておいてください。

 

では金融政策を緩和するのか、引き締めるのかの判断を何でするのかですが、その目安のひとつが物価です。第2次安倍政権発足後にはじまった異次元金融緩和政策でも黒田東彦日銀総裁が2%の物価上昇を目標とするインフレターゲットを設定しました。それは最終的に(景気回復が進み、雇用が改善して消費が伸びることによって)物価上昇率が2%に達するまで金融緩和政策の手を緩めないというコミットメントです。このインフレターゲットについて勘違いしてはならないのは、何でもかんでも物価が2%に上昇すればいいというものではありません。例えば今年(2022年)は昨年の天候不良によって玉ねぎの価格が高騰しましたが、これは金融緩和のせいでしょうか?そんなわけがありません。上にも述べたように景気回復が進み、雇用が改善して消費が伸びることによって2%の物価上昇が起きなければ意味がありません。ですので金融政策の目安には天候要因に左右される生鮮食料品の価格や海外情勢に左右される原油価格などを除いたコアコアCPI(消費者物価指数)を参照にします。詳しいことは何年か前(2018年)に解説しました。

 

 

 

2022年の6~7月現在において、コロナ禍後の資源価格高騰や、ロシアによるウクライナへの侵略戦争が元で起きてしまった原油・天然ガス・穀物など食糧品価格の高騰が進んでおり、日本にもその影響が及んでいますが、それは日銀の金融政策によるものではありません。よく「円安で物価ガー」という人がいますが、為替相場が価格に与えている影響は

思われているほど大きくありません。経済学者・飯田泰之さんのツイートを引用しておきます。

 

ついでにこちらが書いた過去記事もあわせて読んでいただけるとよいかと思います。

 

中央銀行が金融政策の態度を決める上で大事なことは(天候や海外要因によるものを除外した)物価だけではなく、企業の事業や投資意欲と雇用状況をあわせて見ないとダメだということであります。雇用情勢がいまいちなのに、金利を上げてしまえば、企業の資金繰りが悪化して雇用を手控えざるえなくなり、賃下げが進んでしまうことでしょう。にもかかわらずエネルギー資源価格や食料品の価格がたいして下がらなかったら、われわれの生活はかなり苦しくなります。現状の日本においては人々の所得を増やすことで商品価格上昇が続く中でも生活費が賄えるようにしていくことが大事です。

 

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