「新・暮らしの経済手帖~経済知識編~」は先日12月15日をもってサービスを停止したYahoo!ブログ時代の記事を移転させるために開設したブログです。はてなブログでも「「新・暮らしの経済」~時評編~」を開設しておりますが、ここでは経済の基礎的知識を伝えることを目的としています。

先日Yahoo!ブログ時代の全記事を移転させたばかりですが、今後旧くなった記事を中心に加筆・訂正を繰り返していく予定です。

 

今回の記事は「補講」として書きます。「アベノミクスとリフレーション政策」編の補足的内容で、政策レジーム(枠組み)についてです。リフレーション政策とかリフレ派とは何かという話でいろいろ混乱がありますので、そのことについても説明し直す必要があります。

 

リフレーション(Reflation)とは連続的に物価が下落し続けるデフレーション状態から、物価の上昇傾向に転ずるインフレーションへと転ずる状態のことです。リフレーション政策は中央銀行が誓約(コミットメント)した物価目標に収まる程度の穏やかなインフレ状態に安定させつつ、景気や雇用の回復を目指すものです。自分は勝手に「ゆるフレ政策」と名付けています。

 

「デフレ脱却」とか「物価再上昇」とか言いますと、「ハイパーインフレになるー」と騒ぎ立てる極端主義な人たちがかなり多くおりますし、リフレーション政策の目的をただ物価を吊り上げるだけだと勘違いする人がいます。リフレーション政策の目的は民間企業が雇用や設備投資、研究開発等にお金を積極的に遣うよう仕向けさせ、多くの人々の所得を増やしたり、商業活動を活発化させることにあります。人々がお金を遣うことを躊躇い、物価がどんどん下がるデフレ状態ですと、企業は収益が期待できないために生産活動を萎縮し、雇用や設備投資、研究開発などを抑制します。そのために政府や中央銀行は「景気を回復させ物価が再上昇するまで金融緩和政策や積極的財政政策を続けます」と誓約して、企業や個人が安心して投資や消費ができるようにするのです。

 

リフレーション政策のおさらいはこの辺に止めておいて、政策レジームについて述べていきます。リフレーション政策におけるデフレ脱却の二本柱は金融緩和政策と積極的財政政策です。ミクロ的政策になりますが、参入規制の緩和や公営企業の民営化といった政策もまた民間企業の自由な活動を伸ばす上で有効なものですので、これもリフレレジームに加えておきます。

 

デフレと失われた20年」編でも書かせていただいたように、日本は1990年代より異常に長い経済低迷期に陥っていました。そのために個人だけではなく民間企業までが「この先どんどん景気が悪くなり続ける」というパラノイア(破滅的妄想)に囚われてしまいます。こうなるとちょこっと金利を下げただけの金融緩和政策や財政出動による景気対策は効果が出なくなります。「政府が景気対策なんかやったところで、すぐにまた景気が悪くなる」と人々が思い込んでいるので、簡単に企業や個人がお金を遣うようなことをしません。政府や中央銀行がかなり積極的に、かつ長期に渡って金融緩和政策や積極財政をするという姿勢を見せないと、人々は投資や消費行動を変えようとしないのです。

 

企業や個人の予想や期待を変えるためには強いコミットメントだけではなく、金融緩和政策と積極的財政政策そして規制緩和等を単独で散発的にやるのではなく、3つを同時に連携させてやることが大事です。それが政策レジームというものです。

 

2012年末に第2次安倍政権が発足した後で目玉公約というべき経済政策が打ち出せれます。それが俗にいう「アベノミクス」となっていったのですが、これもまた「異次元金融緩和」「積極財政」「規制緩和」が「三本の矢」と位置付けられ、リフレレジームというべき構造を持っていたのです。

2013年~2014年初頭までは異次元金融緩和と積極財政・規制緩和の三本の矢がうまく協調して非常に高い政策効果を見せていましたが、2014年4月の消費税税率8%引き上げを財政政策だけが緊縮傾向に戻ります。飛行機でいえば両翼(あるいは尾翼にも)についたエンジンの片方が停まってしまったような状態です。片側の金融緩和というエンジンだけで企業の投資や雇用が2018年末まで拡大し続けましたが、ここしばらくは日銀も金融緩和政策に消極的な姿勢をチラつかせるようになっています。そのせいかどうかはっきり断言はできませんが、今年2019年から景気失速の暗雲が立ち込め、リフレレジームが崩れかけています。ご承知のとおり今年10月から消費税は10%に増税され、社会保障費なども削減されはじめています。緊縮レジームの復活です。

 

いまの安倍政権は金融緩和と積極財政、規制緩和という三本の矢をバラバラにしてしまっています。そのおかげですべての矢が脆く折れかけています。安倍政権に限らずシロウトの経済アカウントもひどく、極端な財政政策偏重主義で金融政策の有効性を否認するようなMMT(現代貨幣理論)に被れる一派が現れ、金融緩和と積極財政、規制緩和の三政策の協調をさらに崩すことに加担しています。

 

金融緩和と積極財政、規制緩和の足並みが乱れることで、三政策すべてが失効してしまい、その結果としていつまでも超低金利状態を続けざるえなくなったり、余分な財政赤字や国債をどんどん垂れ流すようなことになっていく恐れが出てきているのではないでしょうか。

 

金融緩和と積極財政、規制緩和の三政策を同時に、かつ大胆に行うことで、完全にデフレ・シュリンク経済から脱出させた方が結果的に金融政策の正常化や余分な財政赤字の抑制につながり、安上がりで済むはずだったのにと私は思えてなりません。

 

困ったことにいまの安倍政権の経済政策のゆるみを指摘し、緊張感を戻させるような政策提言や質問ができる野党政党や政治家がほとんどいない有様です。

 

このままだと民間の経済活力がどんどん萎縮し続け、日本はアルゼンチンと同じ道を辿っていくのではないでしょうか。

 

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