ここのブログサイトの「ベーシックインカム構想 」編で紹介しているBI制度設計案は所得税制に基づく給付付き税控除という制度を土台にしたものです。詳しいことは「標準的なベーシックインカムの制度設計案 」で述べました。
国民全員に所得税や資産税を課して所得格差・資産格差を是正し、その後一律でベーシックインカムの支給を行うといった制度設計です。所得が一定以下の人には徴税額よりBI給付額が上回るようになり、所得が増すにつれ実質給付が漸減、高所得者はBI給付分を控除した形で所得税が徴税される仕組みです。これですべての国民が完全な無所得状態になるような事態を回避することができます。
税制と組み合わせたBIや給付付き税控除案が狙うところは徴税と給付の一体化と公正化です。これまで日本の税制と社会保障制度等に則った給付は別々の制度で行われており、行政機関の管轄もバラバラでした。
所得税や資産税の徴税は国民個人や企業・団体等の所得や資産状況を税務署などが把握して行っていますが、逆に生活保護の利用資格認定の判断も申請者の所得や資産状況を調査した上で行われます。公的年金や医療保険の保険料額も保険加入者の所得によって算定されます。別々の行政機関がそれぞれバラバラに国民個人の所得や資産調査を行って、そのデータも各行政機関がバラバラで管理していたのです。
これでは本来一人の人がまとめてやれば一回で終わる仕事を、何人もが重複してやってしまうことと同じです。行政効率が悪くなり時間や労力の無駄となります。さらに脱税や申告漏れ、生活保護の不正受給を見逃す原因にもなります。
ということで所得税・資産税・法人税・相続税・譲渡税・公的年金や公的医療保険などといった社会保険料の徴収業務とBIや給付付き税控除、年金などといった給付業務をひとつの行政機関でまとめてやってしまうべきだという案が歳入庁の創設です。個人の所得や資産状況などを管理する上で必要不可欠なものがマイナンバーです。
これまで生活保護の不正受給問題とか、社会保障問題が議論されるときによく出てくるのが「本当に困っている人(だけ)にお金を」といった言葉です。私がこの言葉を聞いていつも思うのは「では本当に困っている人って誰ですか?誰がどういう基準で判定するんですか?」という疑問ですが、その線引きをはっきりさせる方法のひとつとして国民各個人の所得や資産状況の数値を用いることがあげられます。
現在徴税漏れの額が社会保障保険料・税込みで数兆円もあると指摘する人がいます。
昔から税務署が捕捉している課税所得は給与所得者だと9割押さえているものの、自営業者だと6割、農林水産業だと4割になってしまっていると云われています。この状況を「クロヨン」と呼んでいます。それも実はまだ甘い把握で給与所得者約10割、自営業者約5割、農林水産業者約3割の「トーゴーサン」だとか、政治家の一割も入れて「トーゴーサンピン」という隠語もあります。
もし仮に徴収漏れの数兆円を押さえることができたら、その分だけでも給付付き税控除実現の財源を確保できます。
しかしながら歳入庁の創設やマイナンバーの普及拡大を妨害する人たちがかなりいます。これが進むと全国民や企業の所得や資産状況がガラス張りになって、不正蓄財や送金、マネーロンダリングなどが難しくなってきます。これに反対する人や組織は何か疚しいことをしているのでしょうか?
以下足立議員の質問
「野党は選挙のたびに給付付き税額控除を掲げてきた。ところが最近、維新以外の野党はそれを言わなくなったのはなぜか?」
軽減税率などローテクです。今はマイナンバーがある。日本は導入が遅れたために世界に誇れるマイナンバー制度を構築している。マイナンバー制度を利用した給付付き税額控除を導入するのが一番いい。誰もがそう言う。
これに公明党が反対しているが、何か隠したいことがあるんですか?所得と資産を捕捉されたら困るんですか?
共産党や立憲民主党、国民民主党そして公明党は日頃「生活弱者のために」などと言っていますが、どういうわけか国民に現金直接給付をするような政策から逃げます。立憲民主党や国民民主党の前身だった民主党は歳入庁創設をマニフェストに掲げ政権を奪いましたが、挫折しています。そして公明党は批判の多い軽減税率ばかりに執着します。
歳入庁創設やマイナンバーの普及拡大で困る人といえば、どこかの怪しいテロ国家に不正送金をするとか、自分の資産を海外に移すような人とか、課税逃れやり放題だといわれる宗教法人なんかが思い浮かびますねえ。自分は消費税の増税に反対ですが、消費税の導入のときに「やくざ(非合法)と坊主から、税金をとる」といわれたものです。マイナンバーの役目はまさにそれでしょう。
マイナンバーは国民のプライバシーを侵害するとかいわれますが、生活保護を利用する場合は福祉事務所から所得や資産状況はもちろんのこと、生活状況まで徹底的に調べられます。ケースワーカーの訪問調査を受けねばならず、自分の住まいを覗かれることになり、時として嫌味ったらしく生活態度を注意されることもあります。こっちの方がプライバシーの侵害です。