単刀直入に言えば政府やその子会社的組織と日銀を合わせた統合政府の貸借対照表(バランスシート)で見たとき、現況で財政破綻に陥る可能性はないと言っていいでしょう。特に現在安倍政権が推し進めてきた異次元緩和政策で導入された国債日銀買受によって、市中にあった国債を日銀が買い取って現金化してしまったために、民間からの借金を返済したような状況になっています。民間に対する国が負う債務はほとんどないに等しい状態です。
おまけに景気回復による民間企業の業績改善で所得税や法人税収が伸びて、国債の発行や償還費を除いた政府一般会計の収支=プライマリーバランスの赤字幅も縮小傾向にあります。財政破綻の危険はここ数年でさらに減少したといっていいでしょう。
消費税を10%どころか20%以上引き上げないと国家財政が破綻してしまうなどと言っている経済学者や評論家は、金融政策の知識もプアで、彼らの言っていることを読み通すと首尾一貫性がなく支離滅裂です。毎年毎年「国家財政破綻」とか「日本経済大崩壊」などという本を書いている人がいましたが、一度も当たったことがないですね。こういう人たちを信用するわけにはいきません。
彼らは国家財政についての心配の仕方が間違っているのです。
負債の大きさに目を奪われるのではなく、負債の償還能力つまりは稼ぐ力が十分あるかないかを気にしないといけないのです。トヨタのような優良企業でさえ巨額の負債を持っていますが、その負債以上に稼ぐ力や資産が豊富にあります。経営危機どころか健全経営でしょう。
逆に多くの資産を抱えている人や企業であっても、所得や業績をどんどん下げていくばかりだったら、将来危ないと見るべきです。
このようなことを言うと不思議に思われるかも知れませんが、金融緩和をやめてしまったり、増税や緊縮財政で民間の経済力を衰弱させてしまうことこそ、財政破綻や悪性インフレ(スタグフレーション)発生リスクを高めてしまいます。アルゼンチンのメネム政権の失敗がいい例でしょう。