ひびの入った桶



あるところの使用人は毎日、ご主人の邸宅から丘の下の小川まで両肩に桶を乗せて新鮮な水をくみに往復していました


その桶は毎日、ご主人に新鮮な川の水を届けられることをとてもうれしく、すこし誇りにも思っていました。


ところがこの桶、片方の桶の真ん中あたりに小さな穴が開いてそこから水が漏れているのでした


ある日桶はそのことに気付いて、隣の桶の半分しか水を届けられないことを知り悲しむようになりました。


今日も家の玄関の前まで来るとやはり片方の桶の水は半分になっていました


あるとき桶は、意を決して使用人に告白しました。 


" 僕はなんてだめな桶なんだろう "


せっかくあなたが丘の道のりをきて川から十分に水を満たしても、僕のまん中あたりには小さな穴が開いているんだ、


だから、あなたがご主人の家に着く頃には僕の中に満たされていた水は半分になってしまう


全くだめな桶なんだ。悲しいけど僕を他の桶と取り替えて欲しい。 


「、、、」 


使用人は静かにこう言いました


「今上がってきたこの丘の道にポピーの花が咲いていたのが見えるかい?」 


確かに通ってきた道には色とりどりの柔らかい花弁のポピーの花が咲いていました。


それを見て桶は少しだけこの悲しい気分が晴れたような気持ちになりました


もう少しよく見て欲しいんだ。このポピーの花が道の片方だけに咲いているのに君は気づいたかい? 」 


"


「そう。僕は君の桶から水が少しずつ地面に落ちるのを知っていて君の側だけに花の種を植えておいたんだ。


毎日川から丘を登るたびに、君から種に水をあげていたんだ。 


君が、君であったからこそ、僕は毎日こうして美しい花束をご主人の朝食のテーブルに備えることができるのだよ。」 


ー 忘れないで欲しい、何も欠点がないと言うことが充分という意味ではなくて、君は存在した時点で既に充分なんだ。 


もしかしたらどこか足りないところやできないところ、欠けているところがあるかもしれないけれど、


それはまた誰かの長所や短所、必要な事とぴったりはまるような1つのピースになっているんだよ。 


みんながその個性的な形を持ったピースなんだ。そこに優劣なんてものはないし


僕たちのご主人(宇宙)はその活かし方を全て知っているんだよ


だから安心して、何者にもならずに自分自身を生きて欲しい