兎に角、完成度が高い。

 

「オノマトペイント」

 

題名を聞いてもどんな話なのか想像もつきません。音声を表す「オノマトペ」と視覚的な刺激となる「ペイント」が、果たしてどのように結合していくのか。このことは舞台を観れば「なるほど」と合点がいくことになります。1つだけバラしてしまうと(飽くまで私見の域を出ませんが)、このストーリーのキーワードである『空の色』というメタファーが心のオノマトペの変化を象徴しているということでしょうか。空の色が絶えず変化し続ける様に、私達の悲しみや苦しみもやがて癒されていく。物語の終盤で気持ちを吐露していく3人の心の叫びが様々なオノマトペを発し、そして其々の色が混ざり合って舞台を鮮やかに彩っていく感覚すら抱きました。

 

私も日ごろから、事ある毎に「今見えているコトが全てではない」などと他人だけではなく自分自身を励ましているのですが、『空の色』というメタファーが心の奥底までひしひしと染み入ってくる感じを覚えました。

 

昨年までの作品もDVD化されているので、今回も製品化に少し期待をしつつ“ネタバレ”にならない程度に語りたいと思いますが、今回はリアルな「ラインいじめ」のシーンがあって、強烈なインパクトを残しました。社会風刺ともいえる、この2つめのテーマが主人公のアカリの心の葛藤と絡み合っていくにつれ、無邪気だった幼少の頃の想い出を紡ぎながら本当に大切なものを確認していく3人の女子高生の姿に目頭が熱くなります。

 

今回の舞台は、「青空」と「星空」という2つのチームで公演されましたが、主人公となるアカリは両方とも窪嶋蓮菜さんが演じています。それでも、他の演者が入れ替わることによって、そこにも思わぬ“ペイント”効果が表れています。アカリに恋をするゴンも我が愚息が2チーム共演じさせていただいたのですが、ゴンの登場シーンはアカリとのセットが多かったので、この2人が変わらないことで、逆に其々のチームの色合いがはっきりと分かれて、同じ展開のはずの物語に大きな変化をもたせていたのではないかと感じます。

 

ほのぼのとした幼少時代と、それとは対照的な青春時代の対比は、私達の心の中に潜む感情をも道連れにして感涙へと導いていきます。本当に涙無くしては見られない、そんな感動の作品でした。アカリの哀しみが完全に癒されることはないけれど、最後の回想シーンでは涙の向こうで微笑んでしまう自分に気付いてほっとします。生の舞台なのに、プロローグからエンディングまでの時系列の展開の中に、映画の回想シーンの様な演出が上手に溶け込んでいて、そのことが余計に登場人物の心情表現を際立たせていました。

 

最後に、このストーリーが全て子供たちだけで演じられているということに驚きを隠せません。子供とはいえど、やはりプロの俳優。おじさん、すっかりやられちゃったぞ。

 

でもね、泣いてるのワタシだけぢゃなかったから(負け惜しみw)。