投資手法の一つにドルコスト平均法というものがある。一定の間隔で一定の金額分を買い付けていく手法で、例えば、ある投資信託を毎月1万円分買い続ける、というようなよくある積立投信の手法である。主なメリットとしては平均取得単価が上がりにくく下がりやすい効果があるところだろうか。
定期的に定額を買う、と、定期的に定量を買う、の違いを見てみよう。例として、毎月1万円分を買う場合と毎月1口を買う場合を比べてみる。
価格が上昇しているとき:10,000円 → 12,500円 → 16,000円 と推移する場合
定額:
合計投資額:10,000円x1口 + 12,500円x0.8口 + 16,000円x0.625口 = 30,000円
合計口数:2.425口 平均取得単価:12,372円
定量:
合計投資額:10,000円x1口 + 12,500円x1口 + 16,000円x1口 = 38,500円
合計口数:3口 平均取得単価:12,834円
価格が下落しているとき:10,000円 → 8,000円 → 6,250円 と推移する場合
定額:
合計投資額:10,000円x1口 + 8,000円x1.25口 + 6,250円x1.6口 = 30,000円
合計口数:3.85口 平均取得単価:7,793円
定量:
合計投資額:10,000円x1口 + 8,000円x1口 + 6,250円x1口 = 24,250円
合計口数:3口 平均取得単価:8,084円
価格上昇場面でも価格下落場面でも定量購入よりも定額購入の方が平均取得単価が下がっている。これは価格が高いときは購入する量が少なくなり、価格が低いときは購入する量が多くなるからである。上の例でも価格が上昇しているときは合計購入口数が0.575口少なく、価格が下落しているときは合計購入口数が0.85口多くなっている。
合計の投資金額が異なっているので単純に比較はできないが、利益や損失を見てみると、価格上昇の例では定額の場合は+8,797円、定量の場合は+9,498円、価格下落の例では定額の場合は-5,941円、定量の場合は-5,502円となる。これだけ見ると定量の方がより利益がでてより損失が少なくなるように見えるが、これは投資金額の違いによるもので投資金額あたりの成績を見てみると、価格上昇の定額が+29.3%、定量が+24.7%、価格下落の定額が-19.8%、定量が-22.7%となり、投資金額あたりでみれば定額の方がよいように見える。
ドルコスト平均法が推奨される他の理由として、感情が一切入らずに機械的に定期的に購入すること、1回の購入金額が定額なので投資資金の計画が立てやすいこと、などが挙げられると思う。とくに自分の意思で購入を判断する場合、価格下落場面では追加購入するのを躊躇ってしまい安値での購入機会を逃してしまったということもあるだろう。ドルコスト平均法では機械的に購入するのでその心配はなく、さらに購入する数量が増えるということになる。前回説明したナンピン以上のことを行っているのだ。もちろん価格が下落したままであればナンピン以上の損失となるのだが、逆に価格があがればそれ以上の利益となる。
ドルコスト平均法の投資は、短期運用ではなく長期的な視点での運用をするためのものでる。時間でのリスク分散が行われるので、短期的にハイリターンを目指すものではなく、長期的にローリターンを目指すものに近くなる。それでも、価格の下落時にはより多くを購入するので平均取得単価を下げる効果もあり、また、定期的に購入するので価格の上下で一喜一憂するような精神面豆腐の人にも機械的に継続した積立をすることができる手法でもある。もし、価格が下落した場面で怖くなって積立を止めたり売却してしまうようなこれすらもできない人は根本的に投資には向いていない人なので、元本が保証されている商品のみで運用することをお勧めする。