最近、FIREムーブメントが流行っているというのを見かけることが多くなった。FIREとは Financial Independence, Retire Early の略で、経済的自立と早期リタイアを意味するものだそうだ。特に海外で流行っていると言われているのだが、どのくらい浸透していてどのくらい実践されているのかも分からず、もしかしたら(これが流行ると何等か得をするだろう)流行らせたい人たちが「いま海外でとっても流行っているんですよー」と言っているだけなのかもしれない(単に私が無知なだけかもしれない)。

早期リタイアはサラリーマンだったら誰もが夢見たことくらいはあるはずだ。もし宝くじが当たったら、どこかで10億円を拾ったら、もしかしたら自分は本当はとある資産家の隠し子で遺産相続の話がきたら、などと考えだすと現実味のない妄想の領域に達してしまうため、皆早々とあきらめてしまっていることだと思う。でも、やろうともしないでそう簡単にあきらめてしまってもいいものなのだろうか。早期リタイアは、できる、できない、やる、やらない、にかかわらず実践してみる方がいいと思っている。これは、手元にお金がなくてもそんなの気にせずにいま仕事をやめた方が素晴らしい人生が過ごせるのだ、などと無責任なことを言いたいのではない。正確には、リタイアを実践するのではなくてリタイアをするための準備の部分を実践することを勧めたいのである。なので、何の目処も立たないのに仕事を辞めたらダメ。ゼッタイ。

ではなぜそう思うのか。まず、早期リタイアを意識し早期リタイアに向けた準備をしていくことで確実にマネーリテラシーが培われることがあげられる。残念なことに日本人のマネーリテラシーは低いと言われている。自分の収入がいくらで、毎月どのくらいの出費があって、年間どのくらいの貯金ができて、という今の収支さえも把握できていない人もいるようだが、それでは全然お話にならない。現状を知り、そしてリタイア後に想定する毎月かかる生活費等を計算して、その生活を何十年と続けていくのに必要となる金額がいくらになるのかを決める。リタイア後は、全部貯蓄から切り崩していく生活だったり、想定した利率で資産を運用していく生活だったりで目標となる金額は変わるだろう。そして、その金額を貯めるためには、毎年いくら貯めていかなければいけないのか、それを貯めるにはどのくらいの利率で運用していく必要があるのか、その利率で運用していくにはどうしたらいいのか、どんな運用方法があるのか、等々、考えなければいけないことや決めていかなければいけないことが山のようにある。これらを一からきっちり学び実践していくだけで、そこらへんを歩いている人(失礼!)よりも確実にお金に対するリテラシーのレベルが違くなるはずだと思っている。

もう一つの理由は、もし志半ばで早期リタイアをリタイアすることになったとしても全く持って何のデメリットもないからだ。長い人生の途中で、いつ何が起こるかは誰にもわからない。早期リタイアを目指して頑張っていたとしても、そのうちリタイアする理由がなくなったり、リタイアできない事情ができたりと、リタイアすることをやめることになるかもしれない。しかしそのときに確実に手元に残っているものがある。それはそれまでにコツコツと貯めてきた資産、その資産が全部まるごとそのまま残ることになる。まだ貯めている途中だったとはいえ、リタイア後の生活費にしようとしていた資産である。もしかしたら、毎年そう少なくない金額となるだろう副収入がある状態になっているかもしれない。早期リタイアをあきらめた結果、その副収入がそのまま自由に使えるようになり、もしかしたら手持ちの資産を少しも減らすことなくちょっとリッチなお小遣いがある生活が送れるようになっているかもしれないのだ。早期リタイアには失敗したかもしれないが、生活品質は確実に向上することになるだろう。

以上から、本気で早期リタイアをする気がなくても、本気で早期リタイアをするための準備を始めたほうが、よりよい人生を歩めることになるのではないかと思っている。こういうものは早ければ早く、若いうちに始めたほうが有利なのは確かなのだが、もう若くはないんだよという人もやってみる価値は大いにあると思う。私も40代になってからだけど本気をだしてみることにしたし。