離婚したら面倒な手続きがしばらく続く。離婚届けの役所から始まり、免許証の変更、職場では保険証の変更、銀行の名義も。次々と変更していった。どれもこれも証明書を用意したり提出してから完了まで日数がかかったり。手早く進む順番があるなら知りたかった。


どんどん変更手続きを進めていき、ほぼ終了したかという頃。車の保険の名義を思い出した。やれやれ、事故ってからじゃ遅い。思い立ってすぐカスタマーサポートへ電話をかけた。


変更手続きをお願いします、と言うと慣れた対応で「変更される内容はご住所でしょうか」と聞かれた。「まぁ、そうです、それも変更です、色々変更してます」と答えた。確かに変更することが山ほどあるからだ。


「では、ご住所を郵便番号から教えてください」


電話口の女性の機械的な対応が気持ちいい。流れるようにスルスルと進んでいく。3人にひとりは離婚する時代、変更手続きの電話は慣れっこか。きっと私のことも「離婚したなこの人」とか考えてるのかな。


 「あ、あと、セイも。セイ、セイ、背じゃない、セイです」


 「セイですか?」


 「セイメイ?セイ、セイベツです」



私が言いたかったのは「姓」であった。セイメイに生命と変換して焦ってきた。生命は無事だ。



あんなに流れるような気持ちのいい対応だった彼女が「少々お待ちください」と慌てた口調でぱっと保留音に切り替えてしまった。


セイメイは生命でセイベツは性別、セイは背ではない。日頃のPC慣れがややこしくしている。

保留音からクールな口調に戻った女性が帰ってきた。




「お待たせしました、変更可能です」





マイノリティに寛大な世の中だ。いや間違いです、名前ですと謝った。

ちょっとぉ!なにそれ!とか言って笑ってくれてもいいのに、クールな彼女は終始冷静だった。

そんなこんなで私のセイは無事変更。




「ウジの変更」と言うらしい。そうか。