木の香り。

いい匂い。自然にいるような清々しい気分。

ヒノキのお風呂、なんかいいよね。


木の香り。

防虫にもなる。昔のふっるいダンスからしてた匂い。樟脳。クスノキから抽出されていたとは…


線香も木を由来とした香りのものが多いんだってさ。


思い返せば、木の香りが製品として世に出回っているなんてのはざらなのに、私は、ここ最近まで木から香水のような良い香りが放たれるということと、木の自然の匂いはいいなぁということが同じ事象であることに気付かなかった。


なので、初めて蘭奢待を知った時に、高貴な人が良い匂いと宝物にしてしまう木の存在が不思議でならなかった。

(あとランジャタイってここから名前とったんだなぁ、と芸人に対しての思い)


大体匂いなんて、好き嫌いの別れるものだし、そんな万人ウケするような謳い文句でいい匂いと奈良時代から語り継がれる蘭奢待ってナニモノよと。

木からいい匂いってどういうことかピンと来なすぎる。


そして私は出会ってしまった。

蘭奢待の香りを現代科学で再現したものが、上野で嗅げる機会に巡り合っているということに。

ちょうど仕事に嫌気がさしていたので、有給とっていってみることにした。


正倉院のお宝についての企画展示と蘭奢待かげまっせのイベント展示。基本レプリカなので、本物を見たい人向けではなかったし、入場する時にもあらかじめの注意事項として説明があった。


蘭奢待を嗅ぎに行くのがメインテーマだったので、正直宝物は、流し見でいいかって思っていたものの…遥か遠い昔からお宝として扱われてきた逸品たちは儀式めいた封印作業がなされてきたことや、それらのレプリカ再現にしても原料を集め生産することから再現していくことなどなかなか見応えのある熱い企画だった。


この時期、アニメ夏目友人長にハマっていた私にとっては、展示物の解説を神谷浩史がやっていることに、私だけめっちゃ得してない?と気分も上がったものだった。


そんなこんなでたどり着いた蘭奢待エリア。

香水教室でお世話になってた、謎の覆うやーつ。


そして、香水教室でレクチャーされた匂いの嗅ぎ方同じなの良い!


そして…、嗅いだ。


シナモン。


もう一回嗅いだ。


シナモン。


帰りしなにもう一回嗅いだ。


シナモン。


うん。シナモン。

私は、シナモンの匂い好きだよ。よって、蘭奢待の匂いも好きだ。


足利義政も織田信長も切り取って持っていたシナモン…じゃなくて、蘭奢待。


私は、モノに溢れた現代社会の敗北を見た気がした。嗅いだことのある身近なシナモンしか考えられない。そもそも匂いに造詣がないので、シナモン以外の香りの要素もあるはずだけど、私には嗅ぎ分けられるような嗅覚は持ち合わせていなかった。


そして、今ほど世界の物流が活発でない時代においてはこの手の匂いは世にも珍しいものだったんだろう。だって、シナモンって普通にいい匂いだもん。(もちろん苦手な人もいるけど)


蘭奢待には足利さんや織田さん以外にも切り取られた跡が数十箇所見つかっているらしく、そりゃあ、大昔からいい匂いと謳われたものに皆んなワクワクせずにはいられないのだろう。


でも、そのうちの何人かは、言う程いい匂いか?それほどじゃなくね?って思ってても良いと思うし、思ってて欲しい。


さらに私は、そもそもシナモンが樹皮を乾燥させたスパイスであり、世の中には良い香りの木がこんなすぐ身近に存在していたことを再確認したのであった。


加工された結果でしか世の中を生きていないのだなぁとつくづく思う。

刺身を見て、刺身が海を泳いでいると思う子どもがいると聞くこともあるが、私だって同じだ。結局、結果しか消費していないんだよなぁ。

香りにしたって、本当は自然の中で香る素敵な香りを身に纏いたいところが、原点なんだろう。


それが、いい匂いの香水を纏いたい!になり、匂いの素がもはや自然の成分から抽出したものでないアレルギーフリーかつ、天然を守ろうかつ、大量生産、からの化学的に再現された結果の香りを私は纏っている。


だから、そもそも木からいい匂いがするって意味わからなくない?という本末転倒な疑問が湧いて出てきてしまうのだろうなぁ。