2014年ブラジルワールドカップ、ザックジャパンの救世主として期待される柿谷。今でこそセレッソにおいてもザックジャパンにおいても不動の選手ですが、意外にも苦悩の過去があるのです。
柿谷は10代の頃から天才として注目され、U17のエースとして国際大会で活躍したりもしました。
そのままセレッソの大エースとして順風満帆なサッカー人生が続くかと思われたのですが、セレッソのエースの座はライバルの香川に奪われ、さらに天才ボールテクニシャンゆえにひとりよがりなプレイに走り、チームメイトからの信頼も得られずJ2の弱小クラブにレンタルで出されてしまうのです。
そこから柿谷の大逆転劇がはじまるのではありますが、ひとりよがりなプレイに走る柿谷の気持ちはよくわかります。
もしもこれといったテクニックがない凡人なら、『献身的にチームプレイをおこなおう』という気持ちにはなりますが、卓越したテクニックがある選手は『俺がきめてやる』という感情が湧いて当然です。さらにゴールをきめた選手以外の選手が、ほとんど漠然としか評価されないというのも拍車をかけます。
『ゴールをきめた選手しか明確に評価されないのなら、誰にもボールを渡したくない……』━━私もこのような感情は抱くと思います。
こうした不満を解決するのが、得点王以外の個人タイトルなのです。
新世界サッカーの新たな個人タイトルの数々~得点王だけの時代の終焉~
これによってたとえゴールはきめられなかったとしても、すぐれたパスを出せば、敵をドリブルで抜き去れば、それらが明確な記録として残るのです。
得点王以外の個人タイトルの数々は、中盤や守備の選手たちの活躍を記録として残せるというだけでなく、昔の柿谷のようなひとりよがりな天才たちの精神までも変えることができるのです。