時代はキャプテン翼からファンタジスタへ | ギタリスター誕生~ギター500年の歴史がここから変わる~

ヤフー知恵袋に寄せられた質問
 サッカー漫画史上最高の漫画はジャイアントキリングですか?個人的にダントツでジャイキリが面白いと思うんですが…非現実的な必殺技系も出てこないし、クラブのリアルな事情(スポンサー問題、サポーター事情など)も描かれてるし、戦術的な話、選手のメンタル面、ポジション争いの厳しさ、選手の移籍など細かい部分までしっかりと出てきて、サッカー好きの人から見ても欠点がないと思うし、その上漫画としてのコメディ要素もちゃんとありますよね 正直キャプテン翼より全然ジャイキリの方が、サッカー漫画として面白い漫画じゃないですか?

 

 
ベストアンサー
 30代後半の「キャプテン翼」直撃世代の懐古主義の発言として聞いてほしいのですが。世代が変われば見方も違ってきます。「キャプテン翼」が連載されてた頃は、日本ではサッカーは特に注目されないスポーツだったんです。ワールドカップですらほとんど認知されないほどの。その当時に、ヨーロッパサッカーのクラブ事情や、戦術・メンタルを取り入れても誰も読んではくれないのです。しかも、掲載誌は少年誌です。少年が興味を持ってくれるようなストーリーを考えなくてはならないわけです。

 

 仮に、「キャプテン翼」と同時期に青年誌で「ジャイアントキリング」を連載しても、絶対に人気はでていません。「今現在連載中のサッカー漫画で」という限定なら、もしかしたら質問者様のご意見に賛同される方もいらっしゃるかもしれませんが、「サッカー漫画をメジャーにした」作品として、「キャプテン翼」に比肩しうる漫画は存在しません。それどころか、「サッカーというスポーツをメジャーにした」作品なんです。日本におけるサッカー人口を爆発的に高めた作品です。日本のサッカー協会から、「キャプテン翼がなかったら、サッカー界のプロ化は無かった」と言われてるくらいです。

 

 残念ですが、「ジャイアントキリング」にそこまでの評価があるとは到底思えません。「サッカー漫画で一番面白いのは」という質問ならともかく、「サッカー漫画史上最高の漫画は」という質問に「キャプテン翼」以外のサッカー漫画はあてはまりませんよ。

 

 

 

弥勒の論証

 
 このベストアンサーに質問者の方はすごく納得しているのですが、残念ながら的を射ているとはいえないと思います。

 

 
 まず、ひとつ目。『1980年代、サッカーは人気のないスポーツだったため、クラブ事情や戦術など描いても子供たちに読まれない。そのため高橋陽一は子供ウケする漫画を描いたのだ』━━という意見。

 

 
 キャプテン翼というのはサッカーが日本で大人気スポーツになったあとも、新シリーズがたくさん描かれています。

 

 
 サッカーが日本で大人気スポーツになったあとのキャプテン翼も、サッカーが日本で大人気スポーツになる前のキャプテン翼同様、必殺技頼みの単純な内容です。これでわかるように、高橋陽一はそのような漫画しか描けない人なのであり、時代背景などを考えて単純な内容のサッカー漫画を描いていたわけではないのだということです。

 

 
 次に『当時、ジャイアントキリングを連載しても人気はぜったいに出ていない』という意見。

 

 
 私はそんなことはないと思います。1980年代にジャイアントキリングを連載しても大ヒットしたと思います。なぜなら、【野球に匹敵する大人気スポーツというほどでもないスポーツ】を題材にした漫画で大ヒットした例はいくらでもあるからです。

 

 
 たとえば、剣道を題材にした六三四の剣。剣道は歴史ある競技とはいえ、プロ野球人気とは比較にはならないはずです。さらに六三四の剣にはタイガーショットやファイヤーショットといった必殺技は一切出てきません。技術重視の漫画です。それでも大ヒットを記録しました。

 

 
 最近ではバスケットボールを題材にしたスラムダンクや黒子のバスケなどでしょうか。

 

 
 バスケットボールの人気も野球やサッカーに比べればガクンと落ちます。また、スラムダンクにも黒子のバスケにも必殺技は出てきません。それでもご存知のとおりの歴史的大ヒットを記録しました。

 

 
 こうしたことから、たとえサッカーの人気が低い1980年代だったとしても、ジャイアントキリングは高い確率で人気を集めていたと思われます。

 

 
 次に『キャプテン翼の影響でサッカー人口が爆発的な増えた』という意見。

 

 
 それが本当なら、たとえばキャプテン翼調のカバディの漫画を描いたら、カバディの競技人口が爆発的に増えるのでしょうか?(笑) たぶんありえないと思います。

 

 
 ちなみに私が子供の頃(もちろん1980年代)、友達の間でキャプテン翼という漫画は流行りましたが、サッカーというスポーツ自体はまったく流行りませんでした。公園でおこなわれる球技は野球、キックベース、ドッジボール、このいずれかであり、サッカーがおこなわれたのは片手で数えられるくらいの回数しか記憶にありません。また、学校の部活も、サッカー部など全然人気はありませんでした……。

 

 
 次に『キャプテン翼がサッカー漫画を、さらにはサッカーというスポーツをメジャーなものにした』という意見。

 

 
 もちろん、キャプテン翼も少なからず貢献はしたことでしょう。しかし、『キャプテン翼がサッカーをメジャーにした』とはいくらなんでも大げさすぎです。

 

 
 1960年代から毎週、ダイヤモンドサッカーという45分番組が20年間放送され続けました。現在のサッカー番組は深夜枠の30分番組ばかりです。それに比べたら45分番組のダイヤモンドサッカーというのはものすごい番組だと思います。

 

 
 このダイヤモンドサッカーの存在でわかるように、キャプテン翼が登場する以前からサッカーの人気はそこそこあったのであり、サッカーの魅力を日本に広げようと尽力していた人もたくさんいたというわけです。

 

 
 そもそもサッカーはもともと世界ナンバーワンスポーツでした。別にキャプテン翼が登場しなくても、いずれは日本にもサッカーが根づく時代は訪れていたでしょう。

 

 
 また、三浦和良という絶対的なスターの存在もありました。

 

 
 たとえばロックという音楽ジャンルが市民権を得るのに、なにか漫画の影響はあったのでしょうか?なかったはずです。矢沢永吉という絶対的なスターの登場によって、ロックという音楽ジャンルが市民権を得ただけのことです。

 

 
 サッカーもそれと同じです。ずっと以前からサッカー普及につとめていた人たちと、三浦和良という絶対的なスターの登場━━これだけでサッカーはメジャーなスポーツになっていたことでしょう。

 

 
 最後に『日本サッカー協会が「キャプテン翼がなかったら日本サッカーのプロ化はなかった」といっている』という意見。

 

 
 その話が本当なら、日本サッカー協会のトップはかなりおめでたい人たちですね(笑) それだからいつまでたっても『サッカーのおもしろさがわからない』と口にする人があとを絶たないのです。

  

 
 日本サッカー協会がキャプテン翼の作者・高橋陽一にこのうえない感謝をしている━━これはたとえるならこのような感じでしょうか。

 

 
 ボクシングにさほど興味がなく、ボクシングの知識もたいしてない無名の漫画家が【ドラゴンパンチ】であるとか【サンダーフック】であるとか【ナイアガラアッパー】であるとか、そうした適当な名前のいい加減な必殺技だけで世界チャンピオンにのぼりつめるボクシング漫画を大ヒットさせたとします。その漫画家に日本ボクシング協会が『ボクシング普及に多大な貢献をしてくれてありがとうございます』と感謝状を送り、ボクシングの技術的なおもしろさ・戦術的なおもしろさが凝縮されたはじめの一歩の作者・森川ジョージにはなんの声もかけない━━というところでしょうか。

 

 
 ところで、主人公の必殺技だけで試合がきまってしまう単純漫画キャプテン翼を擁護する人がまれにいますが、ヤフー知恵袋などをのぞいてみても【キャプテン翼=つまらない】という意見の人が圧倒的に多いです。理由は明快。キャプテン翼と実際のサッカーは似ても似つかないからです。

 

 
 もしも高橋陽一がサッカーのおもしろさを広めるためにキャプテン翼を描いたのだとしたら、はっきりいってその効果はあらわれていないと思います。

 

 
 サッカーをまったく知らない人がキャプテン翼を読んだあとに実際のサッカーの試合を見たとします。そのあと『実際のサッカーの試合をすごく楽しめました!』と笑顔で口にする人は皆無でしょう……。

 

 
 キャプテン翼とはサッカーを知らない人たちにへんな誤解を与える漫画です。そんな漫画が国民的サッカー漫画として君臨していることに恐怖を覚えます。

 

 
 2006年のときでした。間近に迫ったドイツワールドカップを記念してか、どこかのテレビ局でキャプテン翼のアニメが放送されたことがあります。このことでわかるように【サッカーといえばキャプテン翼】という絶対的なイメージが刷り込まれてしまっているのです。

 

 
 キャプテン翼はあくまで高橋陽一ワールドという架空の世界の中の“サッカーに似たスポーツ”の話であり、実際のサッカーと結びつけて考えるのはやめたほうがいいと思います。

 

 
 どうせならキャプテン翼ではなく、ファンタジスタという漫画をアニメ放送してほしいです。

 

 
 私がこれまでおもしろいと感じたサッカー漫画は多くありますが、その中でも突出しているのが━━

 

 
 ファンタジスタ

 
 エリアの騎士

 
 ジャイアントキリング

 

 
 ━━この3つです。その中でもファンタジスタこそがナンバーワンにふさわしいと思います。

 

 
 エリアの騎士は登場人物ひとりひとりの個性、戦術の奥深さなど、ファンタジスタを凌駕するかもしれません。ただ、シモネタやギャグ要素が多すぎる点がいただけません。

 

 
 ジャイアントキリングは監督が主人公です。なんだかんだいって、主役はやはりフォワードかオフェンシブハーフが相場です。また、感情移入も難しいと思います。

 

 
 また、サッカーは国際的なスポーツなので、ナショナリズムが刺激されるような内容であるべきだと思います。こうした理由からファンタジスタをナンバーワンに押したいのです。(エリアの騎士は高校サッカーのお話、ジャイアントキリングははじめはプロリーグのお話)

 

 
 次回の2018年ワールドカップからキャプテン翼ではなく、ぜひともファンタジスタのアニメ放送をするようにお願いしたいです。そしてファンタジスタこそが国民的サッカー漫画として君臨する時代がくることを祈りたいです。

 

 

ファンタジスタ ステラ 1 (少年サンデーコミックス)/草場 道輝
¥440
Amazon.co.jp


 

目次へ

蹴球革命へ