深緑に染まる神田川、その石橋の上でぼくはぼんやりとしていた。
ちゃぽんと音を立てて鯉が顔をあらわせば、神田川の水面がゆらゆらと緩やかに波立つのが目に入る。
水中には大根のように丸々と肥えた黒艶やかな鯉が縦横無尽に泳ぎ回っている。幾匹もの鯉が重なっているため時に身体が触れ合い避けるように水面に顔を出す。
ふと顔を見上げれば、青々と茂る若葉にさんさんと輝く太陽の木漏れ日が透き通り黄金色を帯びているのが見えた。
近くでは少年野球の試合でもやっているのか、子供らしくわんぱくで元気溢れる甲高い掛け声が響いている。
かと思えば、負けじと小鳥の心地よいさえずりが空気を震わしている。
ゆらゆらと、のどかな時間が過ぎる休日の午後のひとときであった。