長屋の内庭に設けられた井戸。


裏長屋に住む三人の若妻が寄り合って話しに華を咲かせている。


いわゆる井戸端会議である。


「ねえ、熊さんの奥さんって最近なになさってるのかしら?」


「やだあ、なにいってんだ、あの家には金も名誉も富みもあるださ。どうせ吉原にでも遊びにいってるんだろ」


「やだねえ、男ってのは」


 わいわいと盛り上がる。


上を見上げると青々とした空にふわっと浮かんでいる白雲が見える。


太陽のかんかんと照りつける日差しが眩しい。


もうすぐ昼だろうかとおもっていると、 時がねの鳴り響く音が聞こえた。


「あらやだ、もう昼飯時じゃないの。旦那が帰ってくるわ」


「急いで飯炊きしたいとね」


 三人はそれぞれの家に帰るように散っていった。


ご近所つながりとはいいものだ。


裏長屋十軒はひとつの集団家族みたいなものだ。