激しく腕を上下に振り回す指揮者の動きにぼくは釘付けだった。
その動きは機敏でありつつもふわふわとした円やかな動きを見せた。
オーケストラのリズムに心地よく重なるように甘みを帯びた動きにうっとりとしていると、途端に激しいリズムに転換する。
つまりはメリハリがすごいのである。
ふとバイオリン奏者に視線を向けた。
指揮者の動きに身体を合わせるように弦を奏でると、ぼくの耳元に透き通るような高音の空気が伝わってくる。
そうかと思うと、コンバスの重厚な響きが胸に響いてきた。
なんとも心地の良い気分だ、ぼくは寝入ってしまいそうな気持ちに胸躍らせていた。
いや、実際には少し寝入ってしまったのだが……。
奏者の方に大変失礼なことだった……申し訳ない。