扉をあけると外はまだ太陽が昇りきらない薄暗くにじんた光を見せていた。

 ぼくはマンションの駐輪場にぽつりと置かれた原付に足を向ける。


あたりは一人の生も感じさせないほど静まり返った空気が漂っていたが、原付のエンジンをまわすとにわかに


空気が騒ぎ出すかのような乾いた振動が響いた。

 さあ今日も一日が始まる、ぼくはこの振動が耳を通じて脳に伝わることでいつも一日の始まりを感じている。

 さっと原付にまたがり人っ子一人居ない道へと繰り出す。

 徐々に原付を加速させると顔を突き抜ける朝のひんやりとした風が頬につんと当たる。

まだまだ春も近くはないな、とぼくは感じるのであった。