そこは早朝の市場のような活気に満ちていた。
女性が擦れ違えば会話が弾み心地の良い笑い声が響く、この場に居ることを胸を膨らませて喜んでいるかのような上品な笑い声だ。
 そんな女性のスカートの端を小さな掌で力いっぱい握り締めている女の子が、近くに仲の良い男の子を見つけて駆け寄った。そして、頬を膨らませて子供らしいきゃっきゃとした音を立てているのが分かる。
 ふと反対の方に目をやると、男性二人が力強く握手を交わしているのが見えた。

 両者は握手した手を何度も上下させ顔には沸き踊るような喜びが感じられる。
 久しぶりの再会を心から堪能しているようだった。
誰しもがこの場に居られることを身体一杯に感謝し何ものよりも誇りに感じている。
 ぼくはあたり一面に漂う幸福な空気にしばらく酔いしれていた。