⇒物語の構造をもとにプロットを作る


・主人公の父親は権力者
・主人公は人間として不完全の状態で生まれてくる
・父親が息子の能力を恐れ、また権力欲から第三者にその能力を奪わせたから

・主人公は捨てられる
・主人公は生まれた場所から遠い場所で世捨て人に育てられる
・成長して主人公は血筋を知る
・奪われた力を取り戻すために旅に出る




●タイトル 兼次郎が行く


時は戦国の世、遠江のとある国を治める鹿島道三と言う城主が居た。道三は一際大きな体格と誰にも負けぬ剣術で力を振るい、多くの勲功をあげこの地を治めていた。顔の醜い道三はなかなか嫁のなり手がつかなかったが、そんな道三の力強さに惚れた弥生を奥方として娶っていた。


とある年、道三のもとに宗一郎と名乗る若い野武士が仕官してきた。宗一郎は道三とその他家臣の前ですばらしい刀裁きを披露し誰もが認める形で鹿島家の武士として招きいれられた。その後、宗一郎の卓越した剣術と指導力で国の兵士達の剣術もみるみる上達した。また、宗一郎の若き才能と端正な顔立ちは城内のおなごを魅了した。
そんなある日、道三の奥方である弥生に子供が宿る。しかし、弥生の姿がしばしば見えなくなるのを気にしていた道三は弥生に宿る赤子が宗一郎の子供ではないかと疑心暗鬼でしかたがなかった。そして城内待望の世継ぎである赤子が生まれたが、そのを赤子を見て道三は確信した。道三にはこれっぽっちも似ていない赤子であったのだ。


赤子が生まれてから一ヵ月後、突如道三は赤子を連れて鷹狩りに行くと言って出かけてしまう。道三は宗一郎の血をひく赤子の剣術の才能を恐れて呪術師の元に連れてゆき宗一郎のような剣士にならぬようにと刀を握れぬ呪術をこめて腕輪をはめさせた。そして、共をした兵士にこの赤子を国境の人目の付かぬ森中に捨て去るように命じた。道三が城に戻り赤子が鷹狩りの道中で狼に食われてしまったと言うと、弥生は泣き叫ぶのであった。


赤子は数匹の野犬に囲まれて泣き叫んでいた。ちょうどその時通りがかった旅中の僧侶が声を聞きつけ間一髪のところで赤子を救い出す。こうして、赤子は遠き僧侶の寺で兼次郎と名づけられ育つこととなる。また、僧侶は腕輪にかけられた呪術に気づいていた。
それから十五年ほどの時が過ぎ、兼次郎は捨てられていたことを知らずに若き僧侶として成長していた。ただ、剣術だけはどうしても身に付かなかった。兼次郎が刀を握ろうとすると自然と力が緩んでしまうのだ。親である僧侶は理由を語らなかったが、自分の腕から外れぬ腕輪が原因だろうと兼次郎は感じていた。そして、兼次郎が元服の儀を済ませた後、親である僧侶に真相を聞く。自分が捨て子であること、腕輪にはおそらく呪術がかけられていること。兼次郎は真実を探す旅に出たいと申し出、僧侶はそれを認めた。


こうして、兼次郎は自分の過去と腕輪に秘められた謎を探すべく旅に出る。