●タイトル 初めての告白


 少年の病院生活は一〇年を超えていた。幼いときに病を患い、いつ死ぬか分らないという状態でこんなにも月日が流れたのであった。病の状態は一向に良くならない、代わりに悪くもならない。しかし、少年は生命維持装置をつけてなければ生きてはいられない。少年の月日は何の変化もなく、しかし自由のない月日だった。(逆変化)
少年は、十五歳の誕生日を迎えた。そんな誕生日を祝ってくれるのは……口厳しい医者だけだった。「君はたしか今日が生まれた日だったね、おめでとう」とその言葉だけだ。普段は口やかましいほど少年に指示を出す。あれはだめ。これはだめ。これをつけていなさいと。少年はウンザリだった。(厳格)


そんな時、少年の隣に、同じ歳くらいの女の子が入院してきた。
女の子は、パジャマ姿に長い髪をすくことも無く寝癖らしき毛が立っている。しかも少年と初めて目を交わしたとき、昼過ぎなのに「おはよう」というわけの分らない挨拶をされた。少年はそんな女の子のことを意味不明的に見ていた。
少年は次第にこの女の子と仲良くなっていく。女の子は病院だというのによく少年に話してくれた。それはもう色々なことを話してくれた。(逆節度)
しかし、少年には一つ気がかりがあった。女の子はいつもある男について話した。それはもう楽しそうに。少年は「この男はなんなんだよ!」と心の中で思いながら相槌をうっていた。(逆秩序)
そう、少年は女の子に惹かれていた。少年は初めて恋をしたのだ。しかし、少年の病状が突如悪化する。女の子が心配する。なんとか助かって欲しいと願う声が聞こえてくる。ついに昏睡状態となり、少年は一人集中治療室に入ることになる。(治癒)
生命の危機をさまよったあげく、女の子の言葉で少年は目覚め助かった。そして、女の子に初めての告白をするのだった。(生命)



●タイトル 奥様は幽霊なのです


 あきらと美奈は永遠の愛を誓い婚約の契りを結んだ。あきらは美奈との結婚生活を控えて幸せな想いに満たされていた。そんな当たり前の日々の中事故は起こった。今まで当たり前のように居た人があきらの日々の生活から失われた。あきらは理解できなかった。いや、理解したくなかったのだろう。そう、美奈は死んでしまったのだ……。
 美奈は不運な事故死だった。式場の人と夜遅くまで披露宴の打ち合わせを行い、車を運転して岐路につこうとしていた、そして交差点で出会い頭にトラックと衝突してしまったのだ。(逆生命)
 美奈の居ない日々がもうどれくらいたったのであろう。あきらは淡々と仕事をこなすもののぼおっとしていることが多くなった。周りの友人や家族も美奈の出来事があったので、しばらく触れないでいてあげようと思うのだった。
 しかし、ある日あきらが家に帰るとそこに美奈が居た。夢ではないだろうか、とあきらは自分の頬をつねったが確かな痛さがあった。あきらは美奈に声をかけると、美奈は唇を動かしだした。
「帰りが遅くなってしまってごめんなさい。でも実はわたし幽霊なんです」
そのときのあきらの驚愕振りといったら無かった。
あきらは美奈から状況を聞くと、話しはこうだ。
美奈の死は想定外であきらと美奈は結婚する予定だった。そこで、地上のリレーションの修復のためあきらを美奈の代わりに誰かと結婚させなければならない。そこで神はあきらの前に女性を現せるので、必ず結婚しなければならない。さもないと、リレーションバランスを保つためにあきらにも死んでもらわなければら無くなくなる。
そう美奈は告げた。続けて美奈は言う。
「わたしだって悩んだわ。だって、最愛のあなたが他の女性と結婚するところなんてみたくないもの。でもあなたには生きて幸せになって欲しい。でも、一つだけ神様にお願いしたの。最愛のあなたが他の女性と結婚するところを見届けさせてくださいって」
「ばかやろう! おれにはお前が必要なんだよ」
そういって、手をにぎろうとすると、すかっと空を切った。
「嬉しいわ……でも、わかるでしょう。わたしは幽霊なのよ。もうこの世の人間ではないのよ。あなたとは結婚できないの」
「ごめん、美奈……」
「だから、早く結婚して幸せになって」
「……すぐに答えは出せない、しばらく時間をくれないか」
こうして、あきらと美奈は再会したが、あきらは誰かと結婚しなければならないそうだ。(結合)
 それから、あきらの前にもう一人の女性があらわれる。いかにも塩らしくおとなしい女の子だ。彼女はとても怖がりでそんな怖がりを救うように助ける(逆勇気)
 あきらはその女性といやおうなしに親しくするようになる。でも、後ろで明らかに美奈が悲しんでいるのが分る。おれはどーすればいいんだー!(逆幸運)
 途中から神様も出てきて、あきらの結婚を促す。世界の厳格なバランスを保つためとかなんとかいって、プッシュしてくる。(敵・厳格)
 そして、あきらは決心する。例えば自分が死んでしまうことになっても美奈を選ぶ。おれの心を美奈一人だ。美奈は肩を震わせる。美奈を絶対手放さない(逆解放)
「わかった」神はそれだけ口にするとすうっと消えた。
すると美奈の姿は薄く消えて行き、あきらも意識を失った。それからどれくらい寝ていたのか分らない。おきたら目の前に美奈がいた。病院だった。
美奈は泣きながら言った。「あなた……目覚めたのね、よかった」
なんとおれは事故でずっと昏睡状態だったのだ。そして、美奈を抱きしめる。本当に良かったと。美奈もあきらを抱きしめる。そして、二人は唇を重ねた。




●タイトル 箱入り娘


屋敷でそれはそれは大切に育てられたお嬢様。(庇護)
お嬢様も成長すると、可憐でお美しい姿になっていった。(清楚)
執事は常に節度をもった振る舞いをなさってくださいという。(仲間・節度)
そんなとき、お嬢様は散歩中に一人の倒れている男の子を救う、彼を屋敷に呼び寄せ、食事を与え寝かせてあげた(善良)
お嬢様を囚われの身だと勘違いし、屋敷から救い出そうとするが、なぜかお嬢様は屋敷かでたがらない。(敵・逆解放)
その少年と日々を過ごすことでお嬢様は立派に成長していくのであった。(変化)



●タイトル 植物を守る少年


神は実験と称して、少年に不思議な力を与えた。それは、自然物と話せる力であった。少年は木と花と植物と話すことができるようになった。(創造)
 しかし、少年は次第に元気を失う。自然物は皆不平不満を言うからだ。この世は汚い。水は汚い。植物は大切にしない。という。少年は自分の力を恨めしく思うようになる(逆勇気)
 あるきっかけで、少年は不良の女の子(逆清楚)の願いを聞き入れ、乱雑に植物を伐採していく敵をおさえつけようとする。(敵・逆厳格)
植林業者VS少年という構図で戦った。しかし、植物は無残にもきられようとしてしまう(逆治癒)
しかし、少年は奇跡的に植物を守ることができ、平穏な日々に戻るのであった。(幸運)



● タイトル  カンパニーブレーカー ~倒産請負人~


かつて、経済界で密かに噂される男がいた。男は通称カンパニーブレーカーと呼ばれた、つまり倒産請負人だ。ターゲットに決めた会社を何らかの手段を用いて倒産に追い込む。その企業の社長個人を失墜させるといった程度のものではなく企業そのものの存在を世の中から葬り去ってしまうのだ。企業が無くなるということは、その企業の株主も取引先も

大損害をこうむることとなる。ましてや企業を頼りに生活している従業員とその家族は路頭に迷うこととなるのだ。(逆善良)


そんな噂が経済界からも忘れ去られ、ましてや俊介の過ごす平凡な高校生生活からは絶対に出てこないほどの時が過ぎた。俊介はいつも通りの生活を送っていた。クラスメイトとの日常的な日々、隣席の久美との話す時間。日本は平和だ。そう信じていた。(秩序)


その矢先、俊介の父が急死する。そして、俊介は父の後を継ぐことになる。俊介は父の仕事を十分に知っていた。その知識も父から受け継いでいた。しかし、俊介本人は全く後を継ぐことなど考えていなかったのだ。
そんな俊介の心中などとは関係なく父の持つ運命は俊介にも引き継がれる。国家公安本部対企業犯罪課では反対の声も多くあったが(仲間・公式)カンパニーブレーカーの後継として高校生の俊介が指名された。俊介は、半ば強制的に父の任務を受け継ぐこととなる。その任務とは、企業をカムフラージュとした形で行われる海外への人身売買を行う親元企業を倒産させることだ。命を軽々しく扱う奴らを決して許してはいけない。(敵・生命
こうして、ほのぼのとして俊介の日常は終わりをつげ、企業を倒産に追い込む奮闘の日々が始まる。(逆寛容)


 俊介は国家公安部の力を借りつつも、人身売買の企業組織を倒産に追い込んだ。しかしその過程で多くの人が傷つき、直接悪事を知らない従業員が路頭に迷う姿をみて、俊介は自分の仕事の重大さをしる。その企業を潰すことが世の中皆の平和つながるのだとしても、それによって確実に従業員の家族の平和は失われる。そして、俊介は決心した。親父の後を継ぐためにカンパニーブレーカーを続けるのではなく、自分の意思でカンパニーブレーカーとしての仕事を続けることを。(意思)