まずは、掌編っぽいものを二作。


●タイトル 食べもの


とある財閥の屋敷に可愛らしい女の子が生まれた。一人娘であった女の子はそれはそれは大切に育てられた。(庇護)(慈愛)
「こんなの食べられないから捨てて!」
女の子は、あまりにも過保護に育てられ、少しでも嫌いなものが入っていると召使いに捨てるよう指示するくらいだった。
「食べ物をそまつにしてはいけません!」
そんな女の子を戒めるように執事は口を酸っぱくしてそう言うのだが、(逆寛容)いつも徒労に終わるのであった。(逆秩序)


ある日、そんな女の子に衝撃的な場面が訪れる。めったに行かないが、街の川原に執事と共に散歩に訪れていたときのことだった。
女の子は、橋のふもとにあるダンボールで作られた小さな家を見て声を発する。
「なぁじいや、なんであんなところに犬小屋があるんだ?」
「あれはホームレスの寝床でございます。ホームレスはしっかりとした家を持たず毎日食べ物にも苦労ものなのです」
執事は女の子を戒める良い機会だと考え、そのまま話を続けた。
「お嬢様、世の中にはですね、あの者の様に明日の食べ物にも困る者がいるのです。お嬢様が苦労するお姿などは見たくありませんが、そういう者がいることを理解して食べ物を大切にして頂きたいので」
「話には聞いていたが、世の中には本当に食べたくても食べられぬ者がいるのだな……」
今まで自由気ままに過ごしてきた女の子が胸に手を当てて何やら考え込んでいる様子を見て、執事は満足そうに頷いていた。(変化)
しかし、つぎの瞬間執事は顔をしかめることとなる。
「おい、差し入れだ!」
そう言うと、他のホームレスが袋いっぱいの廃棄弁当を持ってきた。
「ひゃっほう。選り取りみどりだな」
「好きなの選べや、まあこの日本にいる限り食い物なんて腐るほどあるからな」(逆厳格)



●タイトル 運命の愛


「ぼくたちは絶対に切れない赤い糸で結ばれてるのさ」
いつものように優はのろける。武男はそんな話を「またかよ」というような顔つきで黙って聞いていたが、(寛容)ついに言葉を挟む。
「普通そこまで自信満々に言うかよ」
「だって、本当にぼくたちの愛は運命で定められたことなんだからしかたないさ」
優は鼻で笑うかのように答える。
「じゃあ、おれがその愛を試してやろうか」
「どうやって?」
武男はニヤリとした表情をうかべた。
「おれのテクニックにかかれば造作もないことさ。おれに一ヶ月間だけ好きに彼女を口説かせてくれ」(公式)(逆善良)
「くっ……。まぁいいさ、ぼくたちの愛は絶対だからね」


一ヵ月後、優の彼女であったはずの女の子が武男と共に街を歩いている。そんな二人の前に優は躍り出た。(逆幸運)
「そんなはずはない、何かの間違いだ! ぼくたちの愛は運命に定められているんだ。絶対なんだ!」(意思)
「ふははっ、まぁ落ち着けよ」
「落ち着いてなんかいられるか!」
「実はな、彼女はお前のそこまで自信満々の姿を逆に心配してたんだ。それで彼女に相談されてお前を試したって訳さ」
優の彼女はニコッと微笑を浮かべて、優のもとに戻る。(信頼)
「……ははは、分っていたことさ」
優は強がるように声を発する。
武男はそんな優の耳元に顔を近づけて、低い声でつぶやいた。
「一回は味見させてもらったけどな……」



***掌編にしようとせず、短編小説のプロットを作ってみよう***


●タイトル 屋敷の片想い
(コメント――つまらんです)


とある屋敷で召使いとして働く女の子が居た。女の子は主人から奴隷のようにこき使われていたが、(逆至誠)毎日食事が与えられることを神に感謝し慎ましく生きていた。(節度)そんな女の子は屋敷の若旦那に身染められ大事にされるようになる。(庇護)若旦那は綺麗な服を与えたり宝石を与えたりと気を引こうとするが、女の子身の清らかさを第一にして若旦那の誘いを断り続ける。(清楚)しかし、ついには力づくに出た若旦那に女の子は犯されてしまう。(逆信頼)
悲しみに打ちひしがれていた女の子であったが、自分のお腹の中に宿る命を知って、若旦那と結婚することにする。(生命)こうして、若旦那と幸せに暮らしたとさ。



●タイトル 必ず帰るよ


少女は幼い頃からこの修道院で過ごしてきた。(清楚)少女の人懐っこい微笑みは修道院のみならず村中のものに慕われていた。(調和)
そんな時、村はずれに住む母子家庭の子供の母親が重い病に倒れてしまう。少女はなんとか彼らを救ってあげたいと願う。神にこの身を神に捧げても救って欲しいと。そして、彼女は母親を助けるために必要な秘薬を探す旅に出る。(治癒)(生命)しかし、そんな彼女の強い意思が災いとなり、彼女はあまりにも大きな危険を冒してしまう。(敵・勇気)

彼女は命からがら、その秘薬を見つけて、村に帰る。すると、既に母親は死んでしまっていた。悲しみに打ちひしがれる少女。そんな少女は子供を引き取り、立派に育て上げた。(慈愛)




●タイトル こそ泥


こそ泥の男は、楽して儲ける方法はないかと常日頃から考えていた。(逆理性)そんな男にもかなえたい夢があった。(誓約)ある日、男は仕事で失敗をし大怪我を追ってしまう。(逆治癒)自分を殺しにくるものから巧みに逃げのびる。(逆創造)
そんな男を邪魔するものがいた。('逆調和)
そんな男は史上最高のこそ泥へと育った。(逆至誠)