●タイトル フランス人形
そう、私はダイヤモンドのような瞳が自慢のフランス人形。人形だって自分でも分かっていたのに、なぜだか感情があったの、不思議ね。(逆生命)昔は持ち主の女の子によく遊んでもらったわ。(慈愛)でもね、最近はぜんぜん遊んでくれなくなってしまったの。ううん、正確には遊べなくなってしまったのよ。その女の子の母親がいい学校に行くために勉強しなさいと言って、私を物置の奥深くに隠してしまったから。(庇護)(逆結合)でもね、その女の子は勉強がとても嫌いなの。いつも嫌だ嫌だって気持ちが伝わってきた。(逆理性)だからね、わたし代わってあげることにしたのよ。その女の子がフランス人形になって、私は女の子として生まれ変わるの。(創造)
今は、そのフランス人形と遊んでいるわ。
●タイトル 父の家出の真相
勇二は今日もパソコンの前で一日を過ごしていた。誰とも関わりたくない、勇二がそう言い部屋を閉ざしてから一ヶ月がすぎた。(逆協力)
一ヶ月前、急に勇二の父が「戻らない」と書置きを残して姿を消した。突然の出来事に、勇二と母は困惑した。当然、警察にも届け出したが行方がわからないままだ。
母との関係がうまくいっていないことは勇二にも分かっていた。しかし、あまりにも突然の出来事に勇二は大きなショックを受けて部屋に引きこもっている、と母は思っていた。(逆幸運)
そんな母は、なんとか勇二を元気付けようと、扉越しに毎日声をかけるのだが気のない返事しかない。(至誠)そんな勇二の状況は次第に悪化する一方で、声をかけても返事すらしないようになっていった。そして、ついには勇二までも姿を消してしまったのだ。(逆調和)(逆治癒)
「お母さん、おいしいね」
そこには誰が見ても仲むつましい三人の親子が食事をしていた。
勇二は父とメールで連絡を取り合い、このファミレスで落ち合う約束をしていたのだ。しかも、可愛らしい若き母と共に。(逆信頼)
@@一押し
●タイトル 金の隠し場所
一年前、男は仲間三人と銀行強盗を成功させた。(協力)その時に得た十億円のうち四等分した二億五千万円を男はすぐある場所に隠した。さすがに、そんな大金を貯金する訳にはいかない。
そして男は、時折誰にも見つからないように現金を取りに行っては贅沢三昧な暮らしをしていた。(幸運)
とある日、仲間の一人と酒を交わしていると、面白い提案を受けた。どちらかが死んでしまった時に備えて金の隠し場所を互いに教えあおうと言うものであった。酔った勢いもあって、男は隠し場所を交換した。もちろん本当の事など言わないし、相手もそうだろうと思っていた。(知恵)(逆誓約)
しかし、その一週間後、その仲間が急死したと言う連絡が入った。男はすぐにその仲間のもとに駆けつけた。(慈愛)もちろん、仲間の遺体のもとではなく、金のもとへ。嘘の隠し場所かもしれないが、万が一と言うこともある。
――予想に反して、そこには二億円近いお金が残っていた。
男はすぐさまそれを奪い取り、自分の隠し場所へと向かった。
まさに自分の隠し場所に金をしまおうとした瞬間、男は後頭部に強い衝撃を受け絶命した。(逆至誠)
「なっ、おれの作戦は完璧だろ?」
死んだはずの仲間と他の二人の笑い声が響いていた。
●タイトル 不変の政治法則
とある都市国家の政治は腐敗を呈していた。重税に苦しむ国民とは対称的に政治家は贅沢三昧の日々を過ごしていた。(逆善良)しかし、貧困層出身の若き政治家グループはこの状況を何とか変えたいと強く願っていた。(解放)
あくる年、この国家の選挙年がやってきた。国民の選挙によって政治家が交代するのだが、選挙そのものが政治家によって決められた法律で行われるため、毎回、なるべき者が当選するように仕組まれていた。(誓約)(公式)
しかし、今年の選挙で若き政治家グループは圧勝することに成功した。選挙前に腐敗の代名詞とも言える政治家を暗殺し、若き政治家グループが有利に選挙戦に望めるよう策略したのであった。(逆慈愛)
こうしてこの若き政治家グループは、権力と富を得て、念願であった贅沢三昧な暮らしをするのであった。(逆節度)
●タイトル 呟く赤子
とある国はずれに小さな町があった。町は決して裕福ではなかったが、人々の協力で平穏と暮らしていた。(調和)
そんな時、ある家族に産まれた赤子が町中の話題となった。(創造)なんとこの赤子は、産まれながらにして言葉をしゃべった。ただひたすら「北の大樹を掘るべし……北の大樹を掘るべし」と呟くばかりである。この赤子の言う北の大樹とはこの町の守護神が宿ると言われ、樹齢五百年をゆうに超える大木である。当然、大樹を管理する神主は、神聖な樹木を汚そうと口にする赤子を殺してしまおうと言っていた。(清楚)(不理性)
とはいえ、小さな町に生まれた貴重な命である。老齢の町長は未来をたくす赤子を簡単に殺してはいかんとたしなめていた。(節度)
こんな中、赤子の両親だけは赤子の言葉を信じていた。きっと何か意味があるに違いないと。そして、神主が所用でしばらく町を出ている隙に、北の大樹の根元を掘り起こしてしまった。するとどうだろう、懇々とお湯が湧き出てきた。
こうして、この町は温泉町として栄えるに至った。当然、その赤子と両親は町中から祭り上げられることとなった。(信頼)