アナと雪の女王 続編[88] | アナと雪の女王の続編―勝手に書いてみた―

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『よかったぁ…』

アナは、ホッとしたように笑いました。

「アナ…?」

『だって…
ここまでして、【愛してないわ】なんて言われたら、どうしようかと思っちゃった!』

そういたずらっぽく笑うアナの指先に、エルサは目を止め、眉を寄せました。

「アナ、その手…」

アナの細い指先に、小さな包帯がいくつも巻いてあったのです。


『あッ、大丈夫!
…ちょっと失敗しちゃって』

アナは恥ずかしそうに、舌をペロリと出し、小さな包帯だらけの両手を後ろに隠しました。

『あッ!!
でも、ドレスはバッチリよ?』

そして、慌ててそう付け足します。


「もしかして…
このドレス、一人でお直ししたの…?」

アナが、お裁縫が得意な方ではないことを知っているエルサは、心底驚いた様でした。
しかし、アナは首を横に振り、ばつが悪そうに笑います。

『あ~…、最初は一人でするつもりだったのよ?
でも、やっぱり難しくって…
ほらッ!
私って、あんまり手先が器用じゃないでしょ?
だから…ね?』

「手伝ってもらったって…
…いったい誰に?」


アナが、エルサの質問に答えようとした時、扉をノックする音が聞こえてきました。



《…失礼いたします。》

そう言って、部屋に入ってきたのは、使用人のゲルダでした。


《アナ王女様、もうお着きになられたそうです。》

『そう、分かったわ。
じゃあ…向こうはカイに任せて、ゲルダはこっちをお願い。』

アナの言葉に、ゲルダは頭を下げ、答えます。

《そうおっしゃられるだろうと思いまして、カイには準備に取りかかるように、伝えてあります。》

そう言って、ゲルダはいたずらっ子のように、フフフと笑いました。

『フフッ、さすがゲルダね?』

「…どういうこと?
アナ…、貴女いったい何をするつもりなの?」

二人が何のことを言っているのか、さっぱり分からないエルサは、訝しげに眉をしかめます。

しかし、アナはその質問には答えず、エルサの手を掴みました。

『さあ、時間がないわ!
花嫁の支度を急がなくっちゃッ!!』





《いったいどういうことなんだ!?》

ハンスは、今自分が置かれている状況に戸惑っていました。


先刻、アイリーンとロジャーに、半ば無理矢理お城へと連れて来られたハンスは、見つからないようにと、城の裏手にある秘密の抜け道から城に入りました。

(秘密の抜け道のはずなのに、王族以外が使っていいのか…?)

(いや、でも自分も使ってたしな…)

(もう違うところに作った方がいいんじゃ…)

などと、一人ブツブツ考え込むハンスをよそに、アイリーンとロジャーは、ずんずん城の裏手にある森を進んで行ったのです。



《お待ちしておりました。》

アイリーンたちに丁寧にお辞儀をした使用人は、カイと名乗りました。


カイに案内され、城の中へと入ったハンスは、アイリーンに、小さく耳打ちします。

《まさか、式に参列する気ですか?
僕は、遠くから見るだけで…》

──バチンッ

《いッ!!》

《イタタタッ…》

弾けるような音が響いたかと思うと、ハンスは背中を、アイリーンは手を押さえ、しゃがみこみました。


《ハァ…何度同じことをやれば?》

呆れ顔のロジャーは、ため息をつきながら、二人を起こします。


《イタタ…
ッたく! 何言ってるんだい!!》

アイリーンは、包帯がいくつも巻かれた右手を振りながら、ハンスを睨みました。

《あんたが来なきゃ、始まんないだろ!?》

《え…?》

ハンスは、いったいどういうことかと聞き返します。
しかし、アイリーンはそれには答えず、ニヤリと不敵に笑いました。


《さあ、時間がないよ!
花婿の支度を急がなくちゃね?》