プロローグ

ねぇ 覚えてない?
産まれてくる前に
僕とお母さんは
1度 会っているんだよ

壁一面の本棚の前で
僕らは真剣な面持ちで
どれにしようか 考えていた

色んなジャンルが
事細かに分けられていた
でも字が読めなかった
なんて書いてたんだろう

最初のワガママのつもりで
一冊を手に取り これがいいと
無邪気に走り出していた

その時のことを よく思い出してみて
僕は忘れてしまったよ
お母さんは何を感じて 今どう思ってる?
あの本のジャンルのこと

覚えているかしら
お腹にいるころに
お母さんとあなたは
1度 話しているのよ

壁一面の本棚の前で
産まれてもないあなたと
産まれてからのこと考えていた

色んなジャンルの中で
あなたは導かれるように
一冊を手に取り 眺めている

思わず眉をひそめた
苦労はさせたくない 親心で
こっちにしてみたらどう?と
違う本を差しだしたかった

大変だろうけど ページは厚かった
読み応えはあるかもしれない
心が豊かに育つのかな? あなたが選んだ
だったらちゃんと読むのよ

ねぇ 覚えているかしら
産まれてくる前に…

悩んで 苦しんで 傷んでばかりでも
その生き方を疑わなくていい
大丈夫 お母さんは見ていたから
あの本のジャンルのこと

オススメの棚で 泣ける小説
たしかにそう書いてあったの
泣ける人生に 期待しなさい
最後の一行まで 希望を持ちなさい

お母さんに言われなくても
あなたはそういうあなたになるわ