2016年5月14日。
わたしが嘔吐下痢症にかかったゴールデンウィークから、1週間後。
わたしたちは、軽めの登山をした。
前の月に、友人と旅行に行った先で、登山コースを見つけたむろらん。
長野と群馬の県境、碓氷峠にある熊野神社までのピストンコースだ。
県境にあるこの熊野神社、ちょっとおもしろい構造をしている。
この周辺には、『峠の力餅』で有名な茶屋や、見晴台がある観光地だ。
友人との旅行は、宿泊先の駐車場から旅館まで、
ホイホイ坂と呼ばれる山道を30分ほど歩くという、秘湯霧積温泉。
そこの駐車場に、碓氷峠までの登山コースを見つけたのだった。
この時、他の友人たちの誰よりも体力があると、
むろらんはうれしそうに報告してくれた。
「ホイホイ坂、みんなゼイゼイ言ってたけど、俺だけ大丈夫だった。
『むろらん、軽やかだな』と言われたよ」
「ホイホイ坂を、ホイホイ登って行ったんだね!」
「そう、ホイホイ坂を、ホイホイと!俺、体力ついたみたい」
むろらんはやさしい。
こういうくだらないダジャレも、ちゃんと拾ってくれる
毎日のウォーキングと週末毎の登山が、
むろらんに着実に体力と筋力をつけていた。
それは一緒に同じことをしていたわたしも実感できた。
だが、この時のわたしは1週間前に嘔吐下痢症にかかり、
やっと回復したばかり。
身体はまだ、本調子ではなかった。
嘔吐下痢症にかかってから、ほぼOS-1で生きていたから、
ほとんど食べ物を口にしていない。
この1週間で、体重は2キロ落ち、体脂肪率は、2%減った。
嘔吐下痢症の症状はもう治まっていたが、
だからといって、すぐに食事量を戻せるわけではない。
食べていない分、力不足だった。
次の週末、どうする?という会話で、わたしはすかさず、言った。
登山が、したいですぅ!!!
わたしは、欲望に忠実だ。
自分の体調も省みず、そんな希望を出した。
むろらんは、心配症だ。
「え~行けるのか?」
とわたしの体調を気遣ってくれる。
もう動けるし、体力は不安があるけど、ゆっくり行けば、行けるかも。
消化機能は赤ちゃんに戻ったとはいえ、
身体が動けるのに、動かさないのは嫌だった。
むろらんは、わたしが言い出したら聞かないことを、よく知っている。
ちょっと考えたが、承諾してくれた。
コース選択は、いつものとおり登山隊長のむろらんにお任せ。
それが冒頭の、熊野神社までのピストンコースである。
往復5時間程度、しかも目的地は観光地だから、
帰路に不安があれば、そこから交通機関を使うことも出来る。
そして、体力が不安なわたしに、「力をつけに行こうか」と、
碓氷峠の茶屋で、力餅を食べることを目的にしてくれた。
おお!!!
わたしの無茶な要求に、期待以上のコース選択でもって、
答えてくれたむろらん、なんておやさしい!!!
わたしはむろらんのこの配慮に、心底関心したのであった。