目的地の笹ヶ峰高原に着いた頃には、
気持ち悪さは朝より増していたが、吐き気は、なかった。
歩ける体力と気力はまだ、保っている。
体力をHP、気力(メンタル)をMPとするなら、
双方ともまだ50%をきったくらいであった。
この時はまだ、まさか自分が嘔吐下痢症にかかっているとは
想像もしなかったから、なんとなく気持ち悪いな、お腹冷えたかな、
くらいにしか思っていなかった。
単なる寝冷えなら、トイレさえあればなんとかなる、そう思っていた。
果たして、明らかに様子のおかしいわたしを、むろらんは敏感に察し。
れっきとしたがん患者であるむろらんに、
逆に体調を気遣わせてしまう状況になってしまったが、
久しぶりの、むろらんとの湧き水ハント。
行きたい気持ちは、変わらなかった。
駐車場に設置してある地図を確認した。
駐車場から湧き水ポイントまでは、だいたい2キロちょっと。
だいたい20~30分のウォーキングである。
道は、なだらか。
新緑が美しい、晴れて少し風が吹くくらいの、気持ちの良い道のり。
往復で4キロ、1時間。
よし。
この程度なら、行ける。
むろらんと一緒に、歩き始めた。
幸い、ウォーキングルートには、
道中1箇所だけおトイレが完備されていた。
洋式で、ウォシュレットとまではいかないが、
抵抗なく使用できるくらい綺麗で、
トイレットペーパーも充分に用意されている。
この幸運に、心底安堵した。
そういえばおトイレの入り口には、鹿よけネットが張られていたが、
鹿がトイレで何をするのだろう?
病原菌から人間と動物、双方を守る為のものかな、
でもそのおかげでトイレが綺麗に保たれているのかな、
などと考えるくらいの余裕もあった。
この調子悪さが寝冷えなら、出してしまえばあとは回復するだけだ。
そう思いながらも、経験則からくる寝冷えと比較して、
なんとなく違和感があった。
わたしに嘔吐下痢症の経験が一度でもあったなら、
その違和感の正体に気づいたかもしれないが、
幸いにも、その経験は一度もなかった。
無知ゆえの、不敵。
だからこそ、この時は無茶が出来たのだが、
今後似たような状況で、この時と同じ選択が出来るかと聞かれたら、
わたしには、自信がない。