いつものように、むろらんに希望を届けるべく、情報収集に徹底した。
なにせ相手は悪液質、知れば知るほど、恐ろしくなる。
知ることによって、不安を解消できるというのが知識のもつ力だが、今回は相手が悪い。
詳細に知れば知るほど、恐怖は増幅し、不安は増した。
この感じは、前にも、あった。
2014年9月、むろらんが、初めてがんを診断された時のこと。
あの時は、『すい臓がんの疑い』だった。
難治がんランキングのトップを飾る、すい臓がん。
あの時も、情報収集に明け暮れたが、調べても調べても、ろくな情報は、なかった。
でも、そうだ、あの時は、『加藤さん』の記事、『膵臓癌を告知され』 に助けられたんだった。
いつだって、希望は、あるんだ。
負けるもんか。
わたしが逃げたら、どこの誰が、むろらんに希望を届けてやれるんだ。
『絶対に、あきらめない』
『出来ることはなんでもする』
これは、病気発覚当初から、彼と、交わした約束。
むろらんは、うそはつかない。
だったら。
わたしが、あきらめるわけには、いかない。
そして。
適切な栄養状態の改善によって、悪液質症状を脱することができた、という新聞のメディカル記事を目にした。
さらに、悪液質にも、意味があるということを示唆している情報も、目にした。
人間の身体の機能は、人智を超えた、実に神秘的なものだ。
身体が起こすことに、無意味なことが、あるはずはない。
必ず、なにかしら、人体にとって、有用な意味があるはずだ。
それはきっと、悪液質においても。
わたしはそんな、『人体の神秘』を信じている。
だから、悪魔のような悪液質症状でも、人体にとって、なにか、生命を維持するための理由があるはずだと、思っていた。
まさにそのことを補完する、記事を見つけた。
『悪液質は、癌の増殖を抑えようという防衛反応である』
『末梢組織を犠牲にしても、脳は保護しようという反応である』
人体にとって、もっとも大事な脳を守るための、働きだというのだ。
そして、
『悪液質は癌組織の活発な代謝と増殖を抑える』
という記述に、希望を見出した。
エビデンスレベルは、わからない。
でもこの時は、この説にすがった。