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コルム村の弟子伝いに後燕から届いた手紙を読んだタムドクは、チョロ、チュムチ、ヒョンゴの3人を伴って手紙を書いてきた高雲という人物の求めに応じるために、高雲がいる後燕まで行くことを即時に決める。旅立とうとするタムドクに、コ将軍がこの出立が決まった時から何度となく口にしてきた言葉を言う。「陛下、軍を率いずに敵国に入国するのは無謀すぎます。せめて、私共、近衛隊だけでも連れて行ってもらえませんか。すぐに平民の服装に着替えて参りますので・・・」と。
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しかしタムドクは笑顔でコ将軍の言葉を退ける。「大人数で行けば余計に人の目を引くだけです・・」と。
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3人を伴って旅立って行くタムドクの後ろ姿を見つめながらコ将軍は隣にいたカムダンにつぶやく。「あんなに、落ち着きのない陛下を見たのは初めてだ。あの後燕からの手紙には何と書いていたのだ?陛下の様子が変わられたのは、その手紙を読んでからではないか?」と。
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タムドクに宛てて書状を出した高雲は、高句麗の出身者であり、今は後燕の第4皇太子募容宝の側近になっている人物だった。後燕は王位を巡る王の息子同士の政争の渦中にあり、高雲は仕える太子の窮状を救ってもらおうと、出身国の高句麗の王に宛てて書状を出したのだった。
その高雲邸では、人の出入りが激しくなっていた。政敵の慕容煕側が動き始めたとの報が入ったのだった。高雲は臣下の者に指示を出すと、そのまま私室へと急ぎ入って行く。

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そこには高雲の子供達、そして、その子達の教育係の若い女の姿があった。高雲はその女性に声をかける「先生、しばらく子供達と一緒にここを離れて下さい。私達は至急出かけねばならないことが起こったのです。そうなると、女子供しかここには居なくなり危険ですから」と。
先生と呼ばれた女性が高雲に聞く「高句麗からの手紙の返事は来ませんか?」と。高雲は諦め顔で答える。「先生に言われて書状を出しては見ましたが、最初から期待はしていませんでした・・・」と。23-58.jpg
先生と呼ばれた女性は、この屋敷で素性を明かさず、子供たちの教育係として働くスジニだったのだ。高雲が高句麗の王、タムドクに宛てて書状を書いたのも、このスジニの勧めによるものだった。


同じ頃、タムドク一行は後燕にいるコルム村の者に案内され、高雲の邸宅前に到着していた。高句麗からの使者がやって来たと知り、取り次ぎに出た者も驚きを隠せない様子でタムドク達を邸内に案内し、報せを受けた高雲が、タムドク達の待つ部屋に現れる。
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高雲は開口一番に、「高句麗の王に送った書状を読んでくれたのですね」 と言い、「高句麗から兵を出してくれるのでしょうか?」と尋ねる。タムドクの、「王はそのようなことはしないそうです」 との返事にも、高雲は返事を予想していたかのうに頷く。
「やはりそうでしたか、外国に軍を派遣するには無理があるとは思っていました。だが貴国には凄い傭兵もいるとお聞きした。その傭兵を送ってくるかと思っていたのですが・・・」と。高雲の言葉を聞きタムドクは即座に尋ねる。「その傭兵の話をあなたにしたのは誰ですか?」と。
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高雲は突然話を中断させられ、面喰った様子になりながら説明する。私の家にいる高句麗から来た子供の教育係の先生が教えてくれたのだと。タムドクはまたすぐに聞き返す。「その先生にはすぐに会えるだろうか?」と。高雲はそれが何故重要なのか分からないという様子ながらも、答えて言う。今は子供達と出掛けており、この邸内にはいないのですと。その返事に目を伏せるタムドクだった・・・。

そこに、高雲の配下の者が現れ、政敵の慕容煕が太子邸に100人程の兵を送りこんだ模様です、との報せを告げる。
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高雲はタムドクに向かい説明する。後燕の王自身も息子同士の争いに高みの見物の構えで、助けにはならない。私は太子の護衛を務めていて50人程の人数を集めたが、兵士ではない者達なので当てに出来るかはわからない状態なのだと。そして、タムドクに向かって聞くのだった「私達を助けてもらえますか?」と。ヒョンゴが代わりに答えて言う。「我々はあなた達を助けるためにやって来たのです」
それを聞き高雲が尋ねる。「何人の兵を連れてやって来られましたか?」と。
私達4人だけです、と答えるタムドク。高雲はタムドクが言った言葉が理解出来ないかのように聞き返すが、タムドクは再び何事もないかのように同じ言葉を繰り返すのだった。
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高句麗から来たのがたった4人だと知った高雲は、怒りに顔をこわばらせながら席を立ち部屋を出て行く。その姿を見ながらヒョンゴがタムドクに聞く?どうされますか?と。助けましょう とタムドクは告げる。彼には聞きたいこともありますし…と。
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そして、邸宅の園内で配下の者と話をしている高雲のもとに行き、「太子が包囲されている宮は小さく100人の兵士がいれば簡単に宮内へ突入されてしまう、それならば、こっそりと太子を外に連れ出す方法を採りましょう」 と言うのだった。
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そしてタムドクは高雲に、自分は太子の顔を知らないので案内役してくれと頼むのだった。タムドクと高雲が太子の救出について話しながら園内を歩いていた丁度、その時、慕容煕側の動きを街中で見たスジニが、そのことを伝えるため一人、高雲邸に戻ってきていた。声のする方に顔を向けたスジニが見たのは、高雲と歩きながら、こちらに向かってくるタムドクの姿だった。
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遠目に歩くタムドクの姿をじっと見つめるスジニ・・・。タムドクは高雲との話の途中、ふと何かを感じたかのように言葉を切って背後を振り向く。

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そして、同じようにタムドクの側にいたチョロも何かを感じたかのように、スジニがいる方向に顔を向けるのだった。自分の方を見るタムドクに、スジニは姿を見られないように、慌てて柱の陰に隠れる・・・。
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柱の影に隠れながらも、スジニは通り過ぎていくタムドクの姿を目で追うのだった。歩きながらまた何かに呼ばれたかのように、足を止めてスジニのいる方に、一瞬顔を向けたタムドクだったが、そのまま高雲の部屋へと、姿を消したのだった。タムドクの後をついて歩いていたチョロは、スジニの存在を感じたかのようにその歩みを緩め、その場にしばし佇むのだった・・・。
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23-30.jpg思いもよらないタムドクとの再会に、スジニの心の中にはタムドクへの想いが溢れてくる・・・。



23-42.jpg夜を迎え太子である募溶宝の邸宅に到着したタムドクは、包囲されている太子邸のうち、正門ではなく後門の包囲を突破するのが上策として、チョロとチュムチを伴い、後門を包囲していた兵士達を退け宮内に侵入する。
23-18-1.jpgそして高雲の案内により太子が隠れていた部屋を探しだし、無事に太子の救出に成功したのだった。救出劇が終わった後、ヒョンゴは、他の3人と離れた場所でコルム村の弟子に探らせていたことの報せをを受けていた。高雲邸にいた子供の教師が若い女で、一年前から高雲邸で子供の教師をしており、高句麗出身だと。それを聞きヒョンゴは「それは・・・その女は・・・」と思わずつぶやくのだった。

太子を無事、近衛隊に引き渡し自宅に戻ってきた高雲は、避難させていた子供達の帰りを待っていた。子供達を乗せた馬車が到着したことを聞き、門の前まで迎えに出る高雲とタムドク達。高雲は子供と一緒にいた者から、タムドクが会いたがっていた先生は親戚のもとに行ったことを聞き、タムドクにそれを告げるのだった。
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タムドクは「その親戚とは何処にいるのか?」と聞くが、高雲も、時々彼女の子供に会いに行っていたそうだが、場所は知らないと言うのだった。その女が自分の子供に会いに行っていたと聞き、「子供にですか?」と不審気に聞き返すタムドク。高雲はその女性が、一人で子供を育てる未婚の母だったことを教えるのだった。そのタムドクと高雲の話を聞きながら、子供達の乗っていた馬車の中を見ていたヒョンゴは、そこにスジニがいつも使っていた弓矢を見つける。
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子連れの女性だと聞いても、スジニかもしれないという思いを諦めきれないタムドクは、子供達の連れの者に、「その先生と別れた場所はどの辺りですか?」と聞くのだった。ヒョンゴは、スジニの居所を探させてはいけないと、咄嗟に声を出し倒れそうな振りをする。「腹が痛い・・・死にそうだ・・」・と。女性の居場所を聞こうとしていたタムドクだったが、ヒョンゴの異変に驚き、尋ねていたことの答えを聞かないまま、すぐさま彼を邸宅内に連れていく・・・。


邸内では寝床に寝かされたヒョンゴの傍らで、高雲がタムドクにある巻物を高句麗の王に渡して欲しいと託そうとしていた。
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それは前後燕王により捕虜にされた高句麗の妃である、タムドクの祖母が、一緒に捕らわれの身となっていた高雲の祖父に託した巻物だった。巻物を手にしたタムドクは、高雲が部屋から去ると、それを披いてみる。23-40.jpg

2人のやりとりを薄目を開けて聞いていたヒョンゴは、すぐさまタムドクの側に寄り、肩越しに披かれた巻物を見る。その巻物に書かれていたのは、天弓という二文字のみだった。
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その文字を見たヒョンゴが思わず感嘆の声を洩らす。「これがこんな所にあったとは!もはやこの巻物は存在していないと思っていました。これは天弓の秘密について書かれた巻物です。最初の巻が我がコルム村にあり、これが最後の巻なのです・・・」と。タムドクが、だが、たった天弓という二文字しか書かれていないが・・・と聞くと、ヒョンゴは、これは隠された文字で書かれているのです・・・と答えるのだった。


太子を救出した祝宴も終わり、邸内には静けさが戻っていた。邸内を一人歩くチョロの歩む先は、昼間スジニがタムドクの姿を密かに見つめ佇んでいた扉の陰だった。スジニがいた同じ場所に佇み、スジニの想いを汲みとるかのように俯くチョロだった。

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そして、チョロは、夜が更けても調べ物をするタムドクのもとに、酒を持って現れる。おもむろにタムドクの部屋の扉を開き、タムドクに外で酒を飲むようにと無言で誘うのだった。
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チョロの気遣いにタムドクも彼と一緒に部屋を出て酒を飲む。そんな、2人の様子を隠れて見つめる姿があった。それはタムドクの姿を最後に一目見たいと、密かに屋敷内に戻っていたスジニだった。
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部屋から出て来てタムドクはチョロにも酒を勧める。チョロは困った顔をしながらも酒を飲むのだった。そして、飲みつけない為に咽てしまったチョロの様子を笑いながら見るタムドク。その2人の様子をスジニは、涙の溜まった瞳で嬉しそうに見つめるのだった。
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そしてタムドクもまた、酒を飲みながら、スジニと最後に一緒に酒を飲んだ大殿のことを思い出し、一人また物思いに耽るのだった。
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タムドクのそんな様子を、切なそうに、愛おしそうに見つめていたスジニだったが、意を決したように静かにその場をから去っていく・・・。