meronpannyoさんのブログ

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太い声でした。

男は、私の横で自転車をとめました。その自転車の車体には、赤と青の正方形の中に黄色い星が描かれていました。それは、私の従兄がよく持っていたおもちゃのメーカーのマークで、私が警戒心を持つことを阻みました。

男は、近くにある国立大学の教育学部の学生だと名乗り、
締め切りの近づいたレポートの実験を手伝ってほしいと言ってきました。

当時の私は大学生をすごく大人のように感じていましたし、「レポート」というものをとても高尚なもののように思っていました。
なので、その実験を手伝うということが、「私が選ばれたんだ」というような優越感を感じさせ、私はすぐに了承してしまいました。
男が急いでいるかと尋ねたときも、習い事の予定を忘れ、すぐに首を横に振っていました。

男は私を手招きし、わき道へと、自転車をひいていきました。
私はその後を、ついていったのです。
家まであと30メートルの場所に、細い下水道があります。
それはコンクリートの蓋がされていて臭いが上がってくることもないし、その両脇は隣の住民によって花や樹が植えられています。
南北に伸びているので、東西に平行に走る何本かの生活道路を繋いで、近所の住民たちのわき道として利用されていました。

もちろん自動車は通れません。わき道に面する家の人くらいにしか姿を見られないのです。

小学生の私は、そのわき道の前で、
声をかけられたのです。

晴れた日の夕暮れは、
どこか淋しい。

せっかくの気持ちいい日が終わってしまう気がする。青と赤がまじる空が、このまちから私を連れていきそうな気がする。

そして、あの事件が起こったのも、晴れた日の、夕暮れでした。


近所に住んでいた友達と二人、学校から帰る途中でした。
寄り道もせず、いつもの道を、おしゃべりしながら歩いていました。

普段私は、洋裁の得意な祖母が縫ったズボンを着ていることが多かったのですが、
その日は偶然、母が買ってくれたジーンズ地のスカートをはいていました。
それは私のお気に入りで数また少ない女の子らしい服で、私は浮き足立っていたのです。

家の面する小路の角で、友人と別れました。
家まであと100メートル。

私は、せっかくスカートをはいているのに、もうすぐ家についてしまうのが勿体なく思えて、
できるだけゆっくり歩きました。


家まであと30メートル。