笑って泣いて また笑う
― 合格のその瞬間まで ―
3校目の受験も、まさかの合格。
「もしかして……第一志望も、いけるんじゃない?」
そんな言葉が、自然と出ていた。
根拠なんてないのに。
でも、ちょっとだけ光が見えた気がした。
それだけで、心が軽くなった。
そして、第一志望の合格発表の日。
結果はお昼12時。
私は仕事。
娘は学校。
「絶対、お母さん先に見ないでね。帰ってから私が最初に見るから」
朝、何度も念押しされた。
「わかったよ」って笑って答えたけど、
正直、仕事どころじゃなかった。
時計ばっかり見てしまう。
11時50分。
あと10分。
11時59分。
心臓バクバク。
12時。
「あ、もう出てる……」
見たい。
でも約束した。
スマホを開きそうになる手を、何度も止めた。
もし不合格だったら、
仕事中に一人で受け止める自信なんてなかった。
だから、我慢した。
帰るまで、絶対見ないって決めた。
電車の中でもずっとそわそわ。
「もう結果出てるんだよね…」
「みんなもう知ってるんだよね…」
私だけ取り残されてるみたいで、変な気持ちだった。
そして、家に着いた。
深呼吸してドアを開ける。
どんな顔で娘が来るだろう。
緊張してるかな。
泣いてるかな。
いろんな想像をしながら入ったら――
「おかえりー!シールは!?」
……え?
受験の話じゃないの?
今それ??
会社の近くで売ってるお気に入りのシール。
買ってきてって頼まれてたやつ。
それを差し出したら、
嬉しそうにシール帳にペタペタ貼り始めた。
……この子、メンタル強すぎない?
私だけがドキドキしてる。
しばらくして、
「あ、そうだ。結果見ないとね」
って、やっと本題。
「携帯ちょうだい」
いやいやいや、
こっちは心の準備できてないんだけど。
その日はたまたま家族みんな家にいた。
リビングに全員集合。
娘がログインする。
「これだっけ?ここ押すんだよね?」
私の方がソワソワしている。
そして、画面を開いた瞬間。
娘がいつものように、
「え…?」
って、手で口を押さえた。
このリアクション、何回目?って思いながらも、
心臓が止まりそうになった。
「なに!?どう!?」
「……合格、してる」
泣きながら、笑いながら言った。
画面には、はっきり
【合格】
の文字。
その瞬間。
もう、我慢できなかった。
2人で抱き合って大号泣。
「すごいよ……」
「ほんとに頑張ったね……」
「本当にすごいよ……」
何回言ったかわからない。
娘も、
「本当に?間違いじゃないよね?」
「スクショして!スクショして!」
って大興奮。
何回も何回も見直した。
夢じゃないか確認するみたいに。
そして。
「2日目の結果も見る?」
4教科の日。
社会があるから、正直こっちは自信なかった。
「まぁ、1日目受かってるしね」
「ダメでもいいよね」
なんて言いながら開いたら――
また。
「え…」
そして、にやって笑った。
「……こっちも、合格」
え???
2人で固まった。
「え、両方!?」
「両方合格!?」
もうパニック。
嬉しすぎて意味わからない。
家族みんなで叫んで、泣いて、笑って。
ほんとにお祭り状態。
家では全然勉強しない子だった。
テストの点も波が激しくて。
何度も
「大丈夫かな、この子」
って思った。
ケンカもした。
怒った日もあった。
泣いた夜もあった。
でも。
最後の数日。
別人みたいに集中して。
本気で机に向かって。
本気で戦って。
自分の力で、つかみ取った。
奇跡じゃない。
努力の結果だった。
あの必死な横顔、
私は一生忘れないと思う。
そして、もうひとつ。
どうしても書いておきたいことがある。
塾で、いつも一緒に残って勉強していたあの子。
夜10時まで自習して、
「一緒に残ろう」って何度も娘を誘ってくれた子。
正直、あの子がいなかったら、
娘はあそこまで塾に残れていなかったと思う。
何度も何度も、隣で一緒に頑張ってくれた。
戦友みたいな存在。
その子も、同じ第一志望。
そして――
同じように、合格した。
その連絡を聞いたとき、
自分のことみたいに嬉しかった。
「よかったね、本当によかったね」って
心から思った。
一人じゃなかった。
隣に仲間がいた。
だから最後まで走れたんだと思う。
受験って、順位を競うものなのに、
最後は「一緒に受かってよかった」って泣いてる。
なんだか不思議で、でもすごく温かかった。
落ち着いてから、じいじとばあばに電話。
結果を伝えた瞬間、
「えぇぇぇぇ……よかったねぇぇぇ
って、ばあばの泣き声。
「ほんとによかった、ほんとによかった」って
何回も言ってくれた。
そして教えてくれた。
「じいじね、受かるまで毎日赤いセーター着てたの」
「願掛けだからって、絶対脱がなかったんだよ」
そんなふうに、毎日祈ってくれてたんだ。
娘は照れながら、でもすごく嬉しそうだった。
こんなにたくさんの人に応援されてたんだね。
本当に幸せな子だなって思った。
「明日から自由だーーー!!」
飛び跳ねる娘。
あんなに苦しかった受験生活が、やっと終わった。
長かった。
本当に長かった。
でもきっと。
この時間は、
娘だけじゃなく、私にとっても一生忘れられない時間。
親子で一緒に戦った時間だった。
心の底から。
何度でも言いたい。
「本当に、本当に、おめでとう」
そして。
「よく頑張ったね」
これが、我が家の受験の最終章

