私が考えるベートーヴェンの一番暗い曲は?

 

これから書くことは、あくまで私の個人的な感想ですグリーンハート

あしからず。

 

 

短調の曲を選んでいると、

ほかにも後期の作品にいくつかあります。

 

弦楽四重奏曲第14番の哲学的な深さはどうなのか、とか。

または、ミサ・ソレムニスの第4曲アニュス・デイ(神の子羊)とか。

あるいは、ピアノ曲なら

ピアノソナタ第31番の3楽章に含まれる『嘆きの歌』は、格別の悲しみでしょう。

ディアベリ変奏曲にも、『嘆きの歌』の延長線上のような悲しみの曲が出てくる。

第九交響曲にしても、1楽章の、特に展開部に出てくる、尽きない悲しみ。

 

 

 

しかし、

これら後期の作品は、私としては「暗い」という分類には入れたくない。

格調高く、悲しくも美しい。

魂を揺さぶって浄化してくれるかのようです。

 

 

「短調」と「暗い」はイコールではないようです。

 

「暗い」というとマイナス的なイメージを含んでおります。

 

では、私が思っている、ベートーヴェンの最も暗い曲。

 

もったぶらずに早く言いなさいって!

 

案外、身近なところにありまして。

ピアノソナタ「テンペスト」です。

 

 

この曲は、私が知る限り、短調で静かに終わっていく唯一の曲です。

少なくともピアノソナタの中では。

 

 

悲愴も、月光も、熱情も、短調で終わりますが、

思いっきり、怒りをぶつけまくって力の限りを出し切って終わります。

 

 

テンペストがなぜこんなに暗いのか。

1802年ころの作品で、ちょうどこの頃、

ベートーヴェンは、『ハイリゲンシュタットの遺書』を書いています。

 

数年頃前から聴覚の異変を感じていて、あれこれ処方するのですが、

いよいよ、もう悪くなることこそあれ、良くなることはないということが確実になったのです。

ベートーヴェンは、絶望して、

2人の弟宛てに書いたのが『ハイリゲンシュタットの遺書』。

 

ただ、テンペストの後に書いた次のソナタ変ホ長調は、

堂々と力強くも明るいし、

その次の交響曲第2番ニ長調は、

火のように明るく強く、私が高校生の夏休みに毎日、何回か聞いていた曲です。

 

時系列を正確に言うと、

この交響曲2番を作った後にハイリゲンシュタットの遺書を書いていますから、

ハイリゲンシュタットの遺書を書く頃には、恐らくは、

やる気満々、立ち直っていたと思います。

 

 

しかし、一度は、本当に死にたくなるほど絶望したのは間違いないでしょう。

音楽家のライバル達に、「あいつはもうダメだろう。」

と噂されるのを極度に恐れていたので、

難聴はごくごく信頼できる人にしか打ち明けていませんでした。

 

 

そんな気持ちで書いたのがテンペストではなかったかと思います。

現に、3楽章。

ぐるぐる回るだけ回って盛り上がりに欠けた挙げ句に、

最後は静か~に終わってゆく。

 

このときのベートーヴェンの心境だったのではないでしょうか。

 

 

というわけで、テンペスト。

「私の選ぶ」暗い曲ナンバーワンでした。

あくまで私の選曲にすぎません。

 

 

 

ですが、聴覚問題よりも、もっと辛いことが、

後にベートーヴェンには起きますが。

 

 

 

では、この辺で。

ありがとう 乙女のトキメキ 乙女のトキメキ