すっかり肌寒くなる前
まだ水遊びができるほど カラッと暑かった週末に
吸い込まれそうな空を気持ちよく見上げながら
駅まで続く道を てくてく歩いた。
隣を歩く娘が
「あ、ヨーグルト雲！」
と言った。
娘の視線の先には
とろりとした液体が広がったような雲があった。
「ヨーグルト雲？」
と聞き返すと
「保育園のときに、こぼしたヨーグルトみたいだなって思って
それからずっと、ヨーグルト雲って呼んでるんだ！」
と教えてくれた。
それ以来私は
空を見上げるときには
ヨーグルト雲を探している。
ヨーグルト雲は
娘と一緒に見て以来 見れていないけれど
今日見つけた ポップコーン雲のことを
今度娘に話そうと思う。
こういう何気ない会話を
とても愛しく思う。
感じたことを教え合う。
感じたことを共有し合って
それを聞いて感じたことをまた伝えて
また感じたことをまた伝えて。
そうやって時間が
想いが
積み重なっていくことを
嬉しく思う。
眩しい朝日に向かって歩く、駅までの道。
コンビニで買える1杯のコーヒーがあるだけで
とても豊かに感じられる朝の時間。
いつもより眉毛が上手に描けて
ウキウキする心。
昔の恋人とよく似た背格好の人を認め
目で追ってしまうとき。
大事な数字がぴったり合って
隣の人と
目と目で「お疲れ様」と言い合う瞬間。
鞄の中にあるはずの家の鍵が
どうしても探り出せず、
いつまでもごそごそ探す玄関前。
出がけに慌てて手から転がり
棚の下に入っていったリップクリーム。
浮腫んだ足をマッサージするお風呂の中。
エコバッグの中に転がった唐揚げ。
ソファの上で山になった洗濯物。
あなたの目から見えるものすべて
他愛のないものすべて
ぜんぶ ぜんぶ
あなただけの物語になる。
あなたのすぐ近くに
そばにいる人と
それができればいいのかもしれない。
でも
いろいろな理由で
それが難しいときもある。
それでも
いつだって
手と手を重ね合うように
心と心を重ね合う触れ合いを
慈しんでいけたらいいな
と思う。
それが手の届く世界でも
画面越しの世界でも
感じ方は
きっと 同じなはずだから。
もしも
あなたが今すぐ
身近な人とそういう触れ合いが出来ていなくても
画面越しに温かさを感じることで
身近な人に、その温もりをわけてあげればいい。
そうやって
温かさを繋いでいけるから。
あなたが見てるもの
あなたが感じてること
あなたが書けること
全部全部
豊かな実りだよ。
豊かな芸術だよ。
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