リメーク版の「トータル・リコール」を観てきました。

あのね。

ドンパチ、爆発、アクションは、派手なんですけどね。
ただそれだけでした。

旧作が壮大なB級娯楽作だとすれば、
新作は普通のB級娯楽作

全然面白くないってわけじゃないんですけどね。
なんか欲求不満。


なぜか基本的な設定が変えられちゃってます。

旧作の舞台は、地球と火星
繰り返し火星と謎の女の夢を見る主人公クェードは、
肉体労働者だが、地球に住み、そこそこいい暮らしをしている。
テレビでは、虐げられた火星の労働者が、火星で度々テロ行為を行っていることを伝えている。

原作も、地球と火星が舞台で、前作はそれに倣っている。

それに対して、新作の舞台は、人口の減った地球。
それも西欧とオーストラリアのみ。
繰り返し謎の女の夢を見るクェードは、虐げられた労働者のひとりで、貧しい暮らし。
彼らはオーストラリアに居住し、朝晩、地球を貫通するトンネルを使って、富裕層の住む西欧に働きにいく。テレビでは、レジスタンスが西欧でテロ行為を繰り返している。

思いっきりスケールダウン
莫大なコストを使って労働者を移送する、無理な設定
いきなり出鼻を挫かれてしまった。

酷いのは、それだけではない。

旧作が、RPGのように場面が展開していくのに対し、
新作では、ひたすら同じような場面が続く。
何より色が無い
ひたすら白と黒。
まるで白黒映画を観たんではないかと錯覚してしまうぐらい。

鬼嫁の描写にも問題がある。
旧作では、鬼嫁が金髪色白の肌で、謎の女が黒髪で日焼けした肌と好対照だったが、新作では、どちらも黒髪で日焼けした肌に似たような服
ちょっと見に区別がつかない。
追跡劇のあいだ、双方をそれぞれ映すんだが、観ていて混乱してしまう。

もっと根本的に、新作では「現実と記憶の曖昧さ」が全くない。

旧作では、主人公がREKALL社で、催眠状態に入ってから事態が急展開していき、最後は画面がうっすらと白んでいって、夢か現実か分からずに終わる(監督は夢として描いたと言っている)のに対し、
新作では、主人公が催眠状態に入る前に事態が急展開していき、現実として終わる。

主人公は記憶を過去に改竄されているが、ただそれだけ。
新作では、そんな設定、あってもなくても、ほとんど関係ない。

TOTAL RECALL の名前を返せ!と言いたい。

終わり方も酷い。

旧作のスケールの大きさに対し、
新作では数個の爆薬でトンネルを潰して終り。
やたら派手に爆発してるけど、
それで済むならレジスタンスがとっくにやってるだろ!

唯一の見所は、労働者の住む町が、ブレードランナー風だったことかな。