「おっそーい」

生徒会室の長机に足を置き、椅子の中でふんぞりがえりながら、彼女は言った。

畜生、こいつ殴りてぇ…。

「すいません。少し世間話をしていました」

心の中に湧き上がった衝動を押さえつけて、俺は買ってきたジュースを渡す。

買ってきたのは、明るい赤の中に、白い文字で英語が書いてある、皆が大好きな炭酸飲料だ。

飲みすぎると頭に穴があくなんて言われている、あの炭酸飲料だ。

実を言うと、俺は苦手だ。

閑話休題。

「おー、サンキュ」

彼女は軽い礼の言葉を言ってから、缶のタブを開ける。

プシュッ、と軽快な音を立てて開いたそれを、彼女はコクコクと飲む。

余談だが、コクコクというオノマトペは非常に可愛いと思う。本当にここまで可愛いオノマトペは他に存在しうるだろうか?

あとここまで余談と言うにふさわしい余談も中々存在しないと思う。

と、俺がそんな事を考えていると、中身を一通り飲んだらしい会長が話しかけて--

「これ捨ててきてくれ」

--命令してきた。






と、言うわけで、最初のやり取りだと、誰が誰だかよく分からない文章構成をしてしまった中道恭一です。

あ、俺が中道恭一で、会長が高坂椿です。

うーむ、まぁ、タイトルの後に13ってついてるし、初見さんはいないんだろうけどね。

というか、これ読んでる人もいないんだろうね……。

と、俺がそんなことを嘆いているところに、会長の声が飛んでくる。

「おーい中道恭一。お茶用意してくれー」

「え?会長、熱いお茶飲めるんですか?」

「…飲めるよ。お前私のこと馬鹿にしてないか?」

意外だった。ついさっき炭酸飲料を飲んでた人が熱いお茶を頼んでくるなんて。

ていうか、飲めるなら買いに行かせるなよ。

「お前、いま何か勘違いしてない?そのお茶は、別に私が飲むわけじゃないぞ」

俺の心に、また殴りたい衝動がこみ上げてきたところに、会長の声が聞こえる。

まぁ、そうだよな。さすがにそんな嫌がらせじみたことはしないよな。

俺は心を落ち着けて、言われたとおり、生徒会室に元からあった電気ポッドでお茶を入れる。

しかし--誰か、客人でもいるのだろうか。

「誰かいるんですか?会長」

俺がそう聞くと会長は、めんどくさそうに、

「ん…あぁ。依頼者だ」

と答えた。





「あの、私、2年の大峰って言うんですけど」

生徒会室内にある、応接間の中で、俺と会長はとある女生徒の依頼を聞いていた。

ちなみに、応接間は、依頼を受けるときに使用する部屋だ。

そもそも生徒会室以外で依頼を受けることがあまりないので、結構頻繁に使う。

まぁ、知った顔で言っている俺も、ここを使うのは初めてなのだが。

「大峰ね。私と同学年か。-で、どんな依頼で?」

会長は慣れてるように言葉を促す。

俺も来年には、こんなにも依頼に慣れていたりするのだろうか。

うーむ。

と、俺が妙な感慨に浸っていると、「中道恭一。ちゃんと聞け」と、会長が耳打ちしてくる。

小さい子の顔が近くに来ると、ちょっと興奮---げふんげふん。依頼はちゃんと聞かないとな。うん。

俺は、心を入れ替え、依頼者の大峰さんの顔を見る。

すると、彼女は眉根を寄せながら語りだした。

「はい、あの、実は私、落とし物をしちゃって…」

「友達から貰った大切なもので、バッグに付けてたんですけど……紐が切れちゃったみたいで」

「落し物が届いてないか、事務にもいったんですけど、なくて」

「でも多分、中庭だと思って…」

「それで、探したんですけど、なくて…」

「もっと探したかったんですけど、私、今日用事があって、もう帰らないといけなくて…」

「だから、探して欲しいなと思って…」

そこで彼女の話は終わった。

目尻に涙がたまっていたので相当大切なものなのだろう。

なんとなく見てるのが失礼な気がして、俺は目を外した。

そこからは、誰もしゃべらず、室内には大峰さんの鼻をすする音だけが響く。

そして、少しの時間の後、会長が口を開いた。

「それ、本当に落としたのか?」





「え…?」

大峰さんは、会長が放った言葉に目を丸くする。

それは俺も同じだった。

「いや、あんたは、中庭に有ると思うっていったじゃん?いつ切れたかなんて分からないのに、なんでそう思ったのかなって思って」

「…っ!」

大峰さんが息を呑む音が聞こえた。

-しかし、確かに、なんで彼女は中庭だと思ったんだろう。

そんなのわかんないのに。

「て、ことはさ。あんたには何か思い当たる節とかあるんでしょ?」

会長は冷静に言う。

なんだろうか。これが年季の差だろうか。

会長と副会長の差だろうか。

そして、俺がそんなことを思っている間にも、会長は言葉をつなげていく。

「それを言ってくれないかな?じゃないと、依頼受けられないんだけど」

「理由。中庭にあると思った理由」

「例えば、、、、、誰かに投げられたとか」

「っ!!」

大峰さんは、目をこれでもか、というくらい見開いた。

反応からみて、どうやら図星だったらしい。

だが、なんで会長が…?

--結局、彼女は会長が言ったことを認めて、

「探しておいてくれると、助かります」

と言って生徒会室から出ていった。







生徒会室から、大峰さんが出ていってから10秒程してから、俺は会長に尋ねた。

「なんで、分かったんです?」

「ん?なにが?」

「何がって…。大峰さんのことです」

なぜ、彼女は、大峰さんの物が投げられたことを分かったのだろう。

あれは最早推理とか、そういうものじゃない気がしたが…。

どんな答えが返ってくるのかと、俺は身構えたが、彼女から返ってきたのは至極シンプルなものだった。

「ん?だって、私投げられてる現場見たし」

その場でコケそうになった。

そんな単純な理由だったなんて…。

俺が呆れていると、彼女は更に

「そして、実は、彼女が探している落し物がどこにあるか、目星もついてる」

と、サラリと言った。

「って、マジですか!?」

「あぁ、ただ…」

彼女は眉根を寄せる。

少し困ったような顔の彼女は可愛い--じゃなくて、困ったように彼女は頭に手を当てている。

クレーンゲーム初心者のような、悶々ともどかしさを感じているような、そんな表情だった。

そして、少しの間の後に、俺に言ってくる。

「中道恭一。なんであの子は、投げられたことを隠したんだろう」

「え?さぁ?なんででしょう」

それは、確かに不思議だ。

なんで、彼女は、投げた奴らの事を言わなかったんだろうか。

なぜ庇うようなことをしたんだろうか。

悶々と悩む俺に、彼女は、これまたシンプルな答えを言った。

「苛められてるんじゃないかな、彼女」

「っ!?」

「いや、もちろん憶測に過ぎないんだけど」

「………」

今の会長の言葉が事実なら、なんというか、この落とし物の依頼、重いなぁ。

「ま、とりあえず、中庭をさがそうか」

会長はそう言って生徒会室を出ていく。

俺も会長についていきながら、すこし考えた。

苛めとか、、、、作風に合ってない気がする、、、、、と。