「……ただいま」

重い扉を開けて、俺は玄関に入った。-否、重く感じられただけかもしれないが。

今の時刻は3時。始業式が終わってから三時間位経っていた。

数時間ゲーセンにいたからだ。

理由は特にない。

ただ、帰りたくなかっただけかもしれない。

どうでもいいんだけど。

「…おかえり」

俺の声が聞こえたのか、少しの間を開けて、リビングの方から声が聞こえてきた。

俺は、それに特に返すこともなく、自分の部屋がある二階へ上がっていく。

そして自分の部屋の机に、肩からかけていたショルダーバッグを置いて、俺はベッドに倒れ込んだ。

はぁ

息を吐き出すと、得体のしれない眠気が襲ってくる。

だからといって、疲れていたわけじゃない。

ただ、することがないのだ。

それに何をしようとも思わず、何かできるほどの私物もない。

だから、眠気に身を任せるのだ。例え、眠くなくても、目を閉じる。

そんな習慣が、出来ていた。

そうして、自らの呼吸音しか聞こえない部屋で、俺の意識は瞼の裏の闇に紛れて、消える。

「…起きて、黎兄さん」

ゆさゆさ。

「もう夕食の時間です」

ゆさゆさ。

「………」

どす。

「かはっ…!!」

自分の腹部に、明らかな衝撃を感じて、俺は身を起こす。

すると目の前には、

「起きましたか。夕食の時間です」

妹がいた。

別に知らない人だったり、俺の妄想とかではなく、妹がいた。

「…あぁ。分かった。先に降りていてくれ、悠」

目の前の、さっきから俺が、妹妹連呼している相手。

その紹介をしよう。

まず、名前。赤坂悠(あかさかゆう)。

プロフィール。容姿端麗、聡明で、性格も良く、常に落ち着いている。

友好関係。友人が多い、先輩後輩にも良く慕われ、一度生徒会長になった経験もある。

経歴。陸上部都大会三位、学力学年二位etc…。

男子にも女子にも受けがいい。現にどちらからも告白された経験があったりする。

-のように、我が妹、赤坂悠は完璧なのだ。

はっきり言って、俺と血が繋がっているとは思えない。

全て平凡。背景でしかない俺とは違って、妹は主人公である。

兄妹でここまで似つかないのは、おかしいだろう。

そしてそれの理由は、簡単。

兄妹じゃないのだ。俺と、悠は。

悠は俺の従姉妹で、悠の親は今、外国にいる。だから、俺の家で預かっているのだ。

終わり。38文字で終わる説明。シンプルイズザベストだ。

「兄さん。夕食、冷めてしまいますよ」

「…ん、あぁ。今降りる」

俺は思考を止めて、答える。

ベッドから立ち上がり、階段を降りる。

「はぁ…。憂鬱だ…」