平凡。

俺は常にその言葉を背負って生きてきた。

今現在で、16年と296日を生きてきた中で、己が平凡ということに気づいたのは小学5年生の頃。

進級しても何も変わらず、身長体重、要領の良さ、運動神経、適量な友達、適当に一途な好きな人。なにも変わらないことに違和感を覚えたのだ。

とりあえず、この世界では、いきなり女の子とボーイミーツガールを展開することも、頭が天才的によくなったりも、運動が上手くなるわけでもないことがわかった。

クラス替えなんて、せいぜい三割知らない顔になるだけで困らないし。

--全てが平凡なのだ。この世界、俺が関われるのは全て。

予定調和の日々。

毎日毎日毎日毎日…皆飽きずに『日常』に身を投じる。

そんなことに気づいたのだ。

なにかのイベントは必ず観る側。なにかに熱くなることもない。どこかに遠出することもなく、ただ時間を一つの限られた世界で過ごしていく。

そうやって考えたことで、自分が背景な事に気付いた。誰か、この世界の主人公達の背景だということに。

そうして俺、赤坂黎(あかさかはじむ)が平凡を背負って、今年で六年目だ。






よく晴れた日だった。

ただ今4月9日。俺の通っている学校の始業の日だ。

時が止まったのではないか、と疑うくらいに長く感じられた校長の話もようやく終わり、俺たち二年生は各々が指定された教室に向かった。

前述したとおり、俺はクラス替えなど興味もない。それでも、周りの連中のいくばかかは、新しい人間との接触に緊張しているようだった。

多分ああやって緊張してる方が、背景にならないだろう。

俺みたいに、なんの感慨もなく歩いている奴が背景なのだ。

そんな事を考えながら歩いていたら、すぐに二年生の教室についた。2-Cというプレートが壁にかけられて、教室の内装もレトロで落ち着いた雰囲気を持ちながら、どこか温かさを感じさせる場所だった。

俺は、その教室によくわからない好感を持つ。多分誰もが好感を持つだろう。そんな空間だと思う、少なくとも俺は思った。

黒板に目をやると、そこにはこの教室の簡単な相関図と、それの中の机を表してあるであろう正方形には、それぞれに番号がふってあった。そしてその横に黄色の文字で、「出席番号順に座るように」と書いてある。どうやら番号は出席番号のようだ。

ずっと立ち止まって黒板を見ているわけにもいかないので、俺は自分の出席番号が書かれてあった机に向かう。

赤坂という苗字だが、俺の出席番号は一番ではない。まぁ、3番なので大差は無いが。

黒板で確認したところ、3番は窓際の前から3番目の席で前とも後ろとも取れぬ微妙な位置だ。なんとも俺っぽい。

変な共感をして、俺はその机に自分のバッグを置く。中身を出す気にもなれなかったので、そのまま放置して、席に座る。

座った時にギィ、と妖しい音が椅子から出たが、聞こえなかったことにする。

「----!」

「………?」

「~~~~~!?」

会話。

椅子に座って目を閉じると、いろんな声が聞こえてきた。

別にクラス替えしても3分の1は同クラスだった人間なんだから、会話が始まるのは当然といえば当然だが。

ざわざわ…がやがや…。

--?---!

会話は途切れることなく続く。俺はそれをBGMとして聞き流していた。人と人との会話を、正確には声の音を、耳が勝手に拾ってくるのだ。

ただそれを五月蝿いと感じることはなかった。逆に俺は、昔から、、、具体的には平凡と自覚した時から、、、、日常の音を聞くのが好きにだった。

----!------!!

人が生きているのを一番実感するのは、コミュニケーションだと思う。

人の声によるBGMを聞き流しながら、俺は考える。

血が流れていようと、呼吸をしていようと、心臓が鼓動していようと、肺が収縮運動を続けていようと、コミュニケーションが取れないのなら、それは人形に過ぎない。

どれだけリアルに造られていようと、人形なのだ。

----!!…------!!!!

まぁ、背景の俺が言えたことではないが。

----!!!!!!!

というか

----く-!!!

さっきから

---か-ん!!!!!!

「五月蝿い!!」

がばっと机に突っ伏していた上半身をあげる。

すると、目の前には、

「あ、よかった。反応してくれた。寝ちゃったかと思っちゃった」

茶髪の少女が背景に話しかけてきた。