時間というものは経つのが早いもので、48時間。正確にはもっと短いがまぁ、置いておく。
てなわけでちわっす、中道恭一っす。
入学してから濃厚な人間関係を広げています。本当、俺がリア充になるのは時間の問題だと思うくらい、色んな事がありました。そして、今から5分後位にも更に濃厚な事が起きるでしょう。
それは、俺への初めての依頼。そして無理難題。
でも、とても、刺激的なものでしょう。
その依頼をこなすためには、多分ただいま治りかけの左手が、、、、、。ネガティブなことを考えんのはやめよう。大丈夫、左手はほぼ完治してるわけだし。
俺は時計の長針が動くたびに早まる動悸を抑えて、深呼吸をする。
そのまま全身の力を抜いて、椅子に深く座る。焦って体を固めてはいけない。すぐに動けるように、脱力するのだ。
…そして息を全て吐き出した時に
キーンコーン…、と誰もが知るミドレソを組み合わせただけの鐘がなった。
それは、授業終了という意味と共に
《狼》の戦闘が開始されるゴングでもある。
俺は、机という拘束具から勢い良く飛び出し、開けっ放しになっていたドアから飛び出す。
そして、すぐさま後ろに向かってチョークを投げつけた。
理由は簡単。まず最初に、このクラス内にいる強力な《狼》を潰すためだ。
では、その《狼》とは誰か。それはもちろん一年生ではない。そもそも、一年生は潰さなくていい。
すると、ここにいる《狼》とは、必然的に一人しかいない。
そう、四限を受け持っていた教師だ。ドアが開けっ放しだった理由は自分がすぐに出ていけるようにだろう。
「な…!?」
突然飛んできた真っ白い弾丸に、その教師-《狼》は戸惑い、隙を生む。だが、こんな事では潰せない。逆に怒らせるだけだ。そんなことは分かっている。
ただ、一瞬の隙は、それは攻撃のかっこうの的となる。
そう、つまり
「まず、ひとりっしょ!」
辻恋だ。俺が隙をつくり、その間に辻恋が潰す。それが、10才の年の差がある敵を潰す為の作戦だった。
チョークに一瞬気を取られた教師は、それでも、後ろから急接近してきた辻恋にガードを取ろうとするが、僅かに遅れ、辻恋の攻撃を喉に食らう。
辻恋の全力の蹴りを受けた教師は、少し呻いて、そのまま床に倒れ込んだ。
「よし…!」
胸の中に、安堵感が流れ込むが、むしろここは前哨戦。まだ、戦場にすらたどり着いていないことを思い出し、また走り出す。
その後の廊下でも、すれ違う《狼》達を同じ方法で潰して、やっと購買へと至る階段についた。
その全段を飛び越えて、他の少数名の《狼》と同時に戦場へと入る。
しかし人数が少ないからといって、ここで弁当買い占めが出来るほど、ここは甘くない。むしろ逆。弁当を手に取ろうとしても弾かれるだろう。いくら二人で協力しても、10個の弁当を買い尽くすのは無理だろう。早い時間に購買にたどり着いた連中は、それはつまり手強い《狼》という証明なのだ。
「今、ここにいるのは、15か…」
俺は走りながら、今場にいる《狼》の人数を数える。
多分ここにいる《狼》達が今回の鍵となるからだ。
そして、その中に幸か不幸か、紅い尻尾を揺らす《狼》が一人いた。間違いない、会長だ。
視線をぶつけていると、会長もこちらに気付いたようで、笑みを顔に貼り付けながら口パクで言ってきた。
『協力しないか?』
俺もその問いかけに笑顔を返して、会長に近づいていく。
また、同じように会長も寄ってくる。そして
「協力なんてするわけないだろ!中道恭一!」
下段の蹴り。
転ばせるつもりだったらしい。
ただ、彼女は見誤っていた。
俺にも、協力する気なんか欠片もなかったことを。
「そんなん読めてるわ、ちびっ子!!」
俺は会長の下段蹴りを小さく跳んで躱し、変わりに鳩尾に拳を叩き込む。一切の手加減なしで。
幼児虐待っぽく見えるが、これは戦だから。うん。反省してる。
でもここで、そんな悠長なこと言ってられない。
俺は彼女を吹き飛ばして、先を急ぐ。
幸い、誰も購買の目の前にはたどり着いておらず、俺が一番乗りのようだった。
すると、それを見た他の《狼》は、それまでの争いをやめて、俺一人に飛びかかってくる。
その様子は四面楚歌。まさにそんな感じだった。しかも先の会長とのやり取りの間にも続々と《狼》は増え続けているから、襲ってきた奴らはざっと見ても20を越していることが分かる。
そう、ここからだ。これは、想定内。作戦など無い。ここから先、攻撃全てを捌き、その全ての《狼》を潰していく。それだけ。それができなければ、今回の依頼は失敗と終わるのだ。
味方たった二人だけの、この戦争。
他の奴が見れば、不可能だと思うだろう。
だが
「面白い…!!」
俺の心は躍った。昔から、他人に無理だと言われたことを実行してきたんだ。今回だってやれる。
ずっと、特殊体質がないから、などと馬鹿にしてきた奴らを潰して、潰して、潰して……。
特殊体質だけで見下す奴らを潰してきた。
そんな時と同じ。
今体を駆け巡る愉悦は、その時と同じだ。
頭の中で脳内麻薬が溢れ出して、感覚が鋭敏になる。
口から笑みが剥がれない。
高校じゃ普通な高校生活を楽しむつもりだったけど、今回くらいいいだろう。
というか、もうどうせ、普通なんかには戻れない。
だったらとことん楽しんでやる。
それの最初の一つとして、目の前の不可能を。
楽しんでやる。
「久しぶりに本気出してやるから、死ぬ気でこい!糞《狼》共!!」
PS、あとから言われたが、俺って割と二重人格らしい