「だそうだ、辻恋」

宇都宮さんと会った翌日。俺は辻恋に全て話した。

辻恋一郎、『要塞』の名を持つ《狼》の最後を。

話を聞いてる間、彼はずっと黙っていた。

やはり、今の話に、何か思うところがあったのだろう。

多分憤りを。

そのまま俺が話し終え、立ち去ろうとしたら、彼は俺の腕を掴み、口を開いた。

「依頼してもいいか?」





「兄貴は《狼》をやめてから、どうも元気がなかった」

「でも、今の話を聞いて、納得した」

「そりゃそうさ。いきなり自分の居場所が奪われたんだから」

「…だから、もう一回だけ、花見弁当を食べてもらう」

「俺が兄貴のリベンジをする」

「同じ辻恋として、弁当を獲る」

「そして、兄貴をつぶした奴らに復讐してやるんだ」

「今年の花見弁当は」

「一個たりとも譲らねぇ」




辻恋が言った言葉に俺は驚愕した。

彼は、あの無数の狼をはねのけて、たった二人で花見弁当を全て買い占めるといったのだ。

はっきり言って荒唐無稽。

不可能に近い。

…ただ、そんな事を考えている俺も、内心嬉しかった。

争奪戦の場で、あんなことを起こしといて、今《狼》などと呼ばれている奴ら。

そいつらに一矢報いたいのは、俺も同じだったからだ。

俺は、決心する。

「分かった。承ろう」







花見弁当がでるまで、あと二日